秋サケ不漁、前年の1割 海水温上昇、放流数減少 回復見通せず深刻 石巻地方
石巻地方で秋サケ漁の不振が続き、関係者が頭を痛めている。県によると、10月31日時点の石巻地方の沿岸漁獲量は約930匹で、記録的不漁だった前年同期(約8500匹)の約1割と深刻な状況だ。海水温の上昇や稚魚の放流数減少が影響しているとみられ、回復は見通せない。
「40年以上秋サケ漁をしているが、こんなに悪いのは初めてだ」。石巻市北上町十三浜の漁業佐々木市夫さん(76)は、ため息をつく。
大室漁港そばの2カ所に定置網を設置するが、16日の水揚げはわずか5匹。10月から漁を始め、累計の漁獲量は約60匹にとどまる。かつては年間3000匹以上を水揚げした年もあったが、ここ数年は減少傾向が続いているという。
今年はコスト削減のため、仲間との共同操業に切り替えた。佐々木さんは「昨年でさえ悪いなりに1日数十匹取れていたのに。採算が合わず、このままでは続けられない」とこぼす。
市大原川さけ人工ふ化場があり、毎年稚魚を放流している同市雄勝地区でも、遡上(そじょう)は活発化していない。ふ化場の運営を受託する県漁協雄勝町雄勝湾支所は17日、例年より約1カ月遅れで親魚の採捕を始めたが、捕獲はゼロだった。
阿部貴之支所長(49)は「本来ならシーズンも終盤に差し掛かっている時期なのだが」と気をもむ。
県内では2019年以降、秋サケの水揚げが激減。沿岸と河川での漁・捕獲を合わせた来遊数はピークの08年度が350万匹近かったのに対し、22年度は約4万7000匹にとどまった。県によると、海水温の上昇や捕獲数が減ったことに伴う種卵や稚魚放流の減少などが原因と考えられるという。
県東部地方振興事務所水産漁港部の担当者は「稚魚の回帰率も大きく落ちている。来年以降も厳しい状況は続くのではないか」とみる。
(奥山優紀)
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