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東京ドキュメンタリー映画祭・短編部門、「家は生きていく」ノミネート 被災した石巻の一軒家を記録

ちばさんの家を映した作品の一場面(松井さん提供)
家の中を歩くちばさん(松井さん提供)

 東日本大震災で被災した石巻市の一軒家を記録した短編映画「家は生きていく」(2023年、15分)が、「東京ドキュメンタリー映画祭2023」の短編部門にノミネートされた。11、16の両日、東京の新宿ケイズシネマで上映される。制作に関わった同市の彫刻家ちばふみ枝さんは「どう感じてもらえるのか楽しみだ」と期待する。

 撮影した家は同市渡波にあるちばさんの実家。震災の津波で1階部分が浸水し、祖母が避難途中に亡くなった。ちばさんは祖母の遺品が残る家を整理しきれないまま、アトリエ兼倉庫として利用していた。

 映画はドキュメンタリー作家の松井至さんが監督し、昨年撮影した。ちばさんら石巻の芸術関係者でつくる「石巻アートプロジェクト」が開催したイベントに出演した縁で制作した。

 たんすの衣服や津波の堆積物、祖母が残したカセットテープなどを通し、被災経験も含めた、家が積み重ねてきた時間を見つめる。

 ちばさんは映画制作を機に、家との向き合い方が変わったという。手を付けていなかった箇所を片付け始め、今年5月に家を一般公開した。映画上映や祖母のアクセサリーの販売をし、県内外から約50人が訪れた。被災者や近隣住民と「うちもこうだった」「あの頃を思い出す」と震災を語る機会にもなった。

 ちばさんは「作品は見る人それぞれの記憶を喚起するもので、映像の力を感じた。個人的だと思っていたものを外に開くことで、また違った発見があると思わせられた」と話した。

 作品はネット配信していないため、鑑賞希望者は松井さんmatsuimamadou@gmail.comに連絡する。

 映画祭では短編カテゴリ「現代の家」内で上映する。11日は午後2時10分、16日は午後0時半から。

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