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2023ニュース回顧 取材ノートから > 野蒜海水浴場 利用低迷、来夏開設せず

市民らが参加し野蒜海岸で開かれたビーチテニス大会=3日

<ビーチスポーツで活用>

 東日本大震災で被災し、昨年12年ぶりに開設された東松島市の野蒜海水浴場。再開2年目のシーズンを終えた今秋、市は、利用低迷などを理由に来年度以降は開設しない考えを示した。

 野蒜海水浴場は震災前、県内有数の海水浴場として毎年多くの利用客が訪れた。最寄り駅のJR仙石線野蒜駅は海に近く、歩いて砂浜に行くことができた。日よけのテントやシートを広げる家族連れなどでにぎわい、震災前は4万人以上が利用した。

 震災の津波で地域は壊滅的な被害を受け、防潮堤や県道の整備を経て昨夏に海水浴場が再開。以前より西側に移り幅150メートル、奥行き30メートルの遊泳区域が設けられたが、入り込み数は昨年が2720人、今年は4333人にとどまった。昨年は海開き直前に大雨が降り、川から大量のカヤが流れ込んだことも復活に水を差した。今年は1.6倍に増えはしたものの震災前の10分の1以下だった。

 「レジャーの多様化などで海水浴離れが進んだのではないか」とみた渥美巌市長は、市議会9月定例会で来夏以降は開設しない方針を明らかにした。利用低迷の要因には、野蒜駅が高台へ移り鉄道による来訪がしにくくなったこと、震災で周囲の宿泊施設がなくなったことも挙げられ、今年はさらに記録的な猛暑に見舞われた。

 海水浴場は昨年、今年ともに野蒜より利用客が多かった宮戸地区の月浜に一本化し、野蒜はビーチスポーツでの活用を進めるという。昨年整備したビーチテニスとビーチバレーの兼用コートでは、これまで初心者から参加できる大会や全国規模のツアー大会が開かれた。今後は国体予選の誘致を見据え、ビーチサッカー場の整備を望む声も寄せられている。

 震災後、海岸には防潮堤が整備され、一体となった県道も走る。開設場所の背後地にはトイレや駐車場ができ、海水浴客の受け入れ環境は整っていた。それだけに、再開したばかりの海水浴場をなくすという市の判断は唐突にも感じた。海岸ににぎわいが戻ることへの期待は大きかったはずで、市内では今後開設しないことを残念がる声もある。

 3キロにわたる海岸に広がる砂浜は地域の財産で、ビーチスポーツという新たな活用策が実れば交流人口の増加が期待できる。再び地域内外から愛される場所になるよう、関係団体が手を取り活用施策を進めてほしい。(及川智子)

■メモ 
 震災前年の2010年の入り込み数は約4万8000人。東松島観光物産公社が主体となり、昨年震災後初めて開設された。期間中の入り込み数は昨年7月20日~8月21日の33日間が2720人、今年7月14日~8月20日の38日間で4333人だった。

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