閉じる

2023ニュース回顧 取材ノートから > 100回目の石巻川開き祭り 東北屈指の花火が復活

13年ぶりに会場を開北橋下流に戻した花火大会。花火が大きく、一般的なレンズでは光の輪が画角からはみ出した=8月5日

<継承の形、再考の契機に>

 こんなに迫力があったっけ? 8月5日夜、石巻川開き祭りの花火大会で、尺玉から咲く大輪の花を見上げながら驚いた。ドーンという音が体の中まで響く。光の輪は大きすぎてカメラの画角に収まりきらなかった。13年ぶりに石巻市の開北橋下流で打ち上げられた花火は、記憶も想像も超えていた。

 石巻地方最大の夏祭りが今夏、100回目を迎えた。節目を記念し、東日本大震災後では初めて3日間の日程で開催した。花火大会は震災前までの会場に戻し、約1万6000発を打ち上げた。東北屈指とうたう規模が復活。川開きが発祥とされる水中スターマインや音楽と連動した仕掛け花火など演出も華やかだった。

 伝統行事の孫兵衛船競漕(きょうそう)や大漁踊りの参加者数も昨年より大幅に増加。東京ディズニーリゾートのドローンショーやミュージシャンの特別ライブといった記念行事も花を添えた。中止や規模縮小が続いた新型コロナウイルス下の祭りとのギャップもあり、盛り上がりを肌で感じた。

 節目の祭りは、伝統をつないでいく意義の大きさと同時に、その難しさも考えさせた。

 祭りの実行委員会は10月20日に臨時総会を開き、来夏も3日間の日程で、花火大会は開北橋下流で開催することを決めた。斎藤正美市長は花火会場を巡る議論の中で「あれだけの花火を打ち上げたら、他の場所にはもう動かせないのかなと思った」と語った。

 祭りを大きくすれば盛り上がりは増すが、必要な予算も膨らむ。今夏集まった協賛金は約4700万円で、前年より約65%増えた。市も例年900万円の負担金を2900万円に増額した。いずれも100回目だったことが理由で、来年も同水準を確保できる可能性は高くない。

 運営に必要な人手も規模と比例する。川開きは朝から晩まで行事がぎっしり。石巻商工会議所など実行委メンバーの負担は既に相当大きい。ボランティアを申し出た市民もいたというが、炎天下の作業が多く、高齢者らには頼みづらい。

 猛暑の中での開催是非も検討が必要な段階に来たのではないか。今夏は3日間とも真夏日で、陸上行事の小学生鼓笛隊パレードは安全に開催できるかどうか紙一重の条件下で実施された。

 いずれの課題も解決の糸口はきっと、今夏のテーマだった「市民総参加」での議論の先にある。節目に高まった市民の関心を一過性で終わらせず、今後100年の祭りの在り方を考える契機にしたい。(保科暁史)

■メモ 
 3日間の人出は27万6000人(主催者発表)で、震災後では最多を記録した。花火大会の人出は15万人。会場が開北橋下流に戻って安全確保に十分なスペースを確保でき、尺玉や仕掛け花火のナイアガラなどが復活した。

関連リンク

関連タグ

最新写真特集

石巻かほく メディア猫の目

「石巻かほく」は三陸河北新報社が石巻地方で発行する日刊紙です。古くから私たちの暮らしに寄り添ってきた猫のように愛らしく、高すぎず低すぎない目線を大切にします。

三陸河北新報社の会社概要や広告、休刊日などについては、こちらのサイトをご覧ください

ライブカメラ