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輝け未来のアスリート 石巻地方3選手に聞く カヌー、卓球、スケートボード

 2024年は7月にパリ五輪が開かれる「オリンピックイヤー」だ。石巻地方にも世界を見据えて技を磨く若者たちがいる。石巻商高がインターハイ常連のカヌー、仙台市出身の張本智和、美和両選手が活躍する卓球、2021年東京五輪で正式種目になったスケートボードの3競技から、未来にはばたくアスリートたちを紹介する。(藤本久子、石井季実穂)

カヌー 奥山陽仁選手(石巻商高3)

鹿児島国体で4位に入賞した奥山選手(手前)

<先達の背中追い高みへ>

 石巻商カヌー部の3年奥山陽仁選手(18)は、4月から日体大に進学し競技を続ける。「インカレ総合優勝への貢献を目指す。高校の先輩で、世界大会で活躍している永沼崚選手と対戦できるような選手になりたい」と力を込める。

 2、3年時にインターハイ(IH)に出場。スプリントのカナディアンシングル、ペア、フォアの全てで準決勝まで進んだ。

 高校最後の大会だった昨年10月の鹿児島国体では、シングル200メートルで4位に入賞した。「調子が徐々に上がっていき、決勝で一番いいレースができた。最後の試合を楽しもうという気持ちで挑めた」と振り返る。8月のIHでフォームの改善点を見つけ、こぐ姿を動画に撮って確認し、パドルの引き方を修正するなど課題を一つずつ解決していった。

 現在は体作りに力を入れる。身長178センチで、66キロ程度の体重を70キロに増やすことを目標に据えた。筋力トレーニングに加え、食事量を増やし、空腹の時間を減らすために間食におにぎりを食べるなど食トレにも励む。

 目標とする永沼選手は石巻商OBで、4月にはパリ五輪の予選会を控えている。「体格が良く一こぎで進む速さが段違い。日本トップレベルの選手だと思う。勝負ができる選手になりたい」

 進学先の日体大は、カヌーを始めるきっかけになった4歳上の兄や、石巻商カヌー部顧問の佐藤幸也教諭の母校。「強豪がそろう環境に身を置き、一緒に成長していきたい」と意気込む。

 佐藤教諭は「大会でもプレッシャーに負けず、準決勝や決勝で自分の力を発揮できた。大学は自分で積極的に練習していく場だが、こつこつと継続できるタイプ。全国レベルの選手たちと切磋琢磨(せっさたくま)してもらいたい」と期待した。

卓球 木村利渚選手(山下中3)

真剣なまなざしで練習する木村選手

<繊細な技巧の絶対王者>

 ピンポン球を打つ軽快な音が体育館に響く。石巻市山下中3年の木村利渚(りお)選手(15)は県中総体の卓球女子シングルスで1年生から3連覇を果たした、県内中学女子の絶対的な王者だ。

 平日夜は2時間、土日は8時間、ほぼ毎日仙台市の仙台ジュニアクラブへ練習に通う。ハードな日々だが、宿題は学校で済ませるなど文武両道を貫く。睡眠時間も1日最低7時間は確保するという。

 強みは下回転をかける「ツッツキ」と攻撃力。繊細で技巧的なツッツキでチャンスを作る。横下回転のサーブで相手の返球を甘くさせたところで決める「3球目攻撃」も得意だ。

 最近は足の動きに重点を置く。身長は152センチで、同学年では低いほう。「卓球は腕より足が重要。足が先に行かないとボールに届かない」と語る。クラブでの練習の他に、300回のスクワットを日課にするなど下半身強化に努める。

 卓球を始めたのは4歳のころ。全国大会の出場経験がある母と、4歳年上の姉の影響だ。東京五輪男子団体銅メダルの張本選手らが在籍していたクラブに通い始めるが、中学1年のころ、指導を受けていた張本選手の両親が県外へ。コーチがいなくなり、1度は卓球をやめようと思ったという。

 支えになったのは2012年ロンドン五輪女子団体銀メダルの平野早矢香さんを仙台育英高時代に指導した大岡巌さんとの出会い。今も東北の強豪が集まる月1回の強化練習会に参加し、アドバイスを受ける。進学先は大岡さんが卓球部を指導する福島市の桜の聖母学院高に決めた。

 今月は全日本卓球選手権大会が控える。初戦突破し、ベスト16に入ることが目標。「いずれは日本一になり、五輪や世界大会にも出たい」と夢を語った。

スケートボード 村瀬晴選手(矢本東小3)

スケートボードの練習に取り組む村瀬選手

<世界目指しプロ夢見る>

 東松島市矢本東小3年の村瀬晴選手(9)は昨年11月、大分県であったスケートボードの全国大会「FLAKE CUP」で、3年生以下のキッズクラスに挑み、準優勝に輝いた。「いずれはプロの選手になり、世界大会に出てみたい」と未来を見据える。

 「FLAKE CUP」のキッズクラスには全国から約70選手がエントリーした。30秒間演技を行い、技の完成度や難易度などを競った。村瀬選手は技を一度もミスしない「フルメイク」の演技を見せた。「最初から最後まで失敗せず終えられてうれしい」と振り返る。

 スケートボードを始めたのは5歳の頃。母の友人の子どもが大会に出ているのを会場で見たのがきっかけだった。現在はほとんど毎日、石巻市成田の飯野川スケートパークで2~3時間練習する。さまざまな技の組み合わせで50種類ほどのトリックを繰り出せる。

 背中まで届く長い髪は、大会で会う年上の選手への憧れで伸ばしている。「上手な人の演技を見たり、新しい技を決められたりした時が楽しい」と笑う。日本人選手が男女とも金メダルを獲得した東京五輪では、テレビで先輩選手たちの活躍を見守り、刺激を受けた。

 次の大会は今月13日に千葉県で開かれるチャンピオンシップ大会。小学生高学年も同じ条件で競う大会で、レベルが高い。「練習場を使わせてもらうなど、たくさんの人にお世話になっている。優勝を目指しつつ、10位以内に入りたい」と目標を話した。

 父親の智也さん(40)は「石巻地方のスケボーの選手人口はまだ少ない。晴の活躍やパリ五輪がパークの整備や競技が盛り上がるきっかけになることを期待したい」と語った。

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