閉じる

辰年プレーバック 変わりゆく石巻地方

雄勝公民館屋上に乗り上げた大型バスの撤去作業を伝える2012年3月11日の石巻かほく
牧山と日和大橋両有料道路の無料化を報じた2000年8月2日の石巻かほく

 2000年代に入り3度目の辰(たつ)年を迎えた。その間、石巻地方は東日本大震災をはじめ、自治体合併、市街地の郊外化などで姿を大きく変えた。12年前と24年前の辰年に、石巻地方でどんな出来事があったのか。当時の「石巻かほく」をめくり、振り返る。

12年前、2012年

<がれき処理が本格化、津波の跡と街の面影消える>

 2012年の石巻地方は、甚大な被害を受けた東日本大震災からの復旧・復興が本格化した1年だった。

 当時はまだがれきの山が街中に点在していた。県が石巻市潮見町の2次仮置き場に建設した焼却施設の火入れ式が5月13日にあり、処理が本格化した。亀山紘市長(当時)は「がれき処理が目に見えて進むことは古里の再生に大変心強い」と期待した。

 石巻地方で発生した災害廃棄物は800万トンを超え、一般廃棄物の100年分に上った。各市町だけでは到底対応しきれず、県が約300万トンの処理を受託。県内外の自治体による広域処理も進んだ。

 5月に北九州市が試験焼却を実施。放射性物質への不安などから地元で反対運動も起こる中、市は6月20日に受け入れを正式表明した。西日本の自治体では初めてだった。21日の石巻かほくは「北九州市受け入れ決断」の見出しで大きく伝えた。同日には東京都への廃畳の搬出も開始。広域処理は県内のほか、山形県や茨城県、八戸市などにも広がった。石巻地方のがれき処理は14年3月まで続いた。

 震災の爪痕は着実に取り除かれていった。震災から1年となる3月11日の石巻かほくには、津波で雄勝公民館の2階屋上に乗り上げた大型バスの撤去作業の写真が載った。有識者らからは津波の脅威を伝える遺構としての保存を求める声もあったが、被災者感情に配慮して市が解体を決めた。

 4月14日には女川町中心部で被災した大型公共施設の解体工事に関する記事が掲載された。観光施設「マリンパル女川」や町役場庁舎の解体が大詰めを迎えていた。記事には「やはり寂しい」「復興のため前を向くしかない」という町民の言葉があった。津波の爪痕が消えることは、震災前の面影が失われることでもあった。(保科暁史)

【2012年の石巻地方の主な出来事】
 3月11日 東日本大震災1年
   17日 JR仙石線陸前小野-矢本間、石巻線石巻-渡波間が運転再開
   22日 石巻工高が選抜高校野球大会に初出場
 4月29日 女川町に仮設「きぼうのかね商店街」がオープン
 5月13日 石巻市潮見町のがれき焼却施設で火入れ式
 6月 9日 仮設「石巻まちなか復興マルシェ」開設
 8月30日 日本製紙石巻工場の製造ライン完全復旧
11月 4日 新蛇田地区被災市街地復興土地区画整理事業の起工式
   17日 石ノ森萬画館が再開

震災で被災し、移転再建された石巻市雄勝総合支所と雄勝公民館などの複合施設(中央)。高台に移り、周囲には住宅や道の駅「硯上の里おがつ」の施設などが立ち並ぶ

24年前、2000年 

<総合運動公園が開所 牧山道路・日和大橋が無料に>

 石巻市のスポーツ拠点である市総合運動公園は、2000年4月9日にオープンした。総面積約39ヘクタールのうち、第1工区として完成したのは約15ヘクタール。約120億円を投じ、野球場、フットボール場、ふれあいグラウンドを整備した。

 記念式典やプロ野球巨人の元エース堀内恒夫さんらを招いた野球教室が開かれた。10日の石巻かほくは「総合運動公園に歓声」の見出しとともに、当時の市体育協会長の「12万市民が渇望していた施設。いつでも来て楽しく運動してほしい」との祝辞を伝えた。

 震災では自衛隊や災害ボランティアの拠点となり、付近には多くの仮設住宅が建設された。災害廃棄物の仮置き場となった石巻商高隣接地の南ブロック(第3工区)には17年度に人工芝のフットボールフィールド、18年度に大型遊具を配置した子ども広場などを開設。野球場そばには、陸上競技場の建設も計画されている。防災機能を兼ね備え、災害時には住民の避難や救援・復旧活動の拠点としての役割も担う。

 8月1日には、地域住民の念願だった牧山、日和大橋の両有料道路が無料化された。以前は県道路公社が管理し、通行料がともに片道150円かかった。

 2日の石巻かほくは「湊地区の国道398号の渋滞緩和が図られるほか、産業振興や半島方面への最短コースとしてのニーズも一層高まる」と報じ、牧山道路の利用者の声を「通勤が便利になった。これからは毎日利用したい」と紹介した。

 北上川に架かる日和大橋の約500メートル上流側には、震災の復興事業で災害時の避難道となる「石巻かわみなと大橋」が整備された。両岸には新たに形成された市街地や産業団地があり、利便性向上や産業活性化も期待されている。(奥山優紀)

【2000年の石巻地方の主な出来事】  
 1月18日 石ノ森萬画館が着工
 3月13日 牡鹿町網地島の網長中で最後の卒業式。3月末で閉校し島から学校がなくなった
   22日 航空自衛隊松島基地のT2ジェット練習機が女川町の山林に墜落
 4月 8日 石巻市の田代島に「マンガアイランド」がオープン
    9日 石巻市総合運動公園オープン
 7月 4日 航空自衛隊松島基地のT4ジェット練習機2機が牡鹿半島の山林に墜落
 8月 1日 牧山、日和大橋の両有料道路無料化
11月 5日 石巻東宝映画劇場が60年の歴史に幕

2000年に通行無料となった日和大橋(奥)。震災の復興事業で石巻かわみなと大橋(手前)が整備され、防災機能と利便性が向上した

関連リンク

石巻かほく メディア猫の目

「石巻かほく」は三陸河北新報社が石巻地方で発行する日刊紙です。古くから私たちの暮らしに寄り添ってきた猫のように愛らしく、高すぎず低すぎない目線を大切にします。

三陸河北新報社の会社概要や広告などについては、こちらのサイトをご覧ください ≫

ライブカメラ