達人、辰人2024 (3) 居合道 松濤館館主・長谷川大光さん
次代に残す使命担う
30畳の広い道場に日本刀が空を切る音だけが響く。約500年の伝統を持つ居合道は日本刀による形を習得し、当時の侍が相手の動きに対してどういう対応をしていたかを表す古武道だ。
東松島市矢本上河戸で宗家直門の無双直伝英信流道場「松濤館」を開く長谷川大光館主(73)は「自分自身の技が充実していた時期の業前を維持したい」とけいこに専心する。
風格と威厳があるこの道55年の達人だが慢心せず、精進を重ねる。「いつまでたっても終わりがない」。自己に厳しく、けいこで高めた精神力、品位は追随を許さない。
長谷川さんは石巻市生まれ、秋田県育ち。曹洞宗寺院の長男だったが、中学生の時に父親が他界し、仏門に入らず19歳で航空自衛隊に入隊した。埼玉県の入間基地に配属され、建物の外で窓ガラスに自分の姿を写して木刀で素振りをしていたところ、上官から「居合をやってみないか」と勧誘され、基地の居合道部に入部した。
1970年に開催された航空自衛隊主催の居合道全国大会2段の部で初優勝し、71年3段の部、72年4段の部を制した。71年は全日本居合道連盟主催の全国大会に関東代表として3段の部に出場し優勝。その後も4段の部、5段の部、6段の部で優勝を飾るなど快進撃が続いた。43歳の時、最年少で8段に昇段した。
「理想の先生の後を追い続けている」。無双直伝英信流20代宗家河野百錬の教えを受け、21代宗家福井聖山の下で約30年修行した。
「居合道は日本の文化。貴重な文化遺産だ」と言い切る長谷川さん。「宗家から伝授された技を、私見を加えず、全く変えることなくそのまま人に伝える」をモットーに、96年の松濤館開館以来、会員には1対1で指導する。
新型コロナウイルス禍で対面でのけいこが難しくなった2020年からは、形の解釈とやり方をフェイスブックに投稿し、510項目を超えた。「宗家から受け継いできた伝統の技を次の世代に残すのが使命」と語り、出版を目指している。「辰人」の挑戦は続く。
(浜尾幸朗)
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