女川・出島、悲願の架け橋 開通へ(3) 工事 悪天候が響き、延期続く
2023年11月16日、女川町の離島・出島と本土が橋でつながった。架橋工事は天候や海象の影響で延期が相次ぎ、当初の予定から約1カ月遅れた。巨大な橋桁を海上で架設する大がかりな工事だった。作業を見守った関係者の安堵(あんど)の表情が、その苦労を物語っていた。
■海峡 風と波強く
「技術よりも天気との戦いだった」。橋上部の施工を担ったJFEエンジニアリング(横浜市)の徳永佳照監理技術者は12月にあった島民対象の現場見学会で、工事を振り返った。
橋は風による震動の影響を受けにくいアーチ状を採用した。JFEが津市の工場でパーツを製作。23年1月から順次、女川港の石浜地区に運び込み、橋桁を本土側、島側、中央部の3ブロックに分けて組み立てた。
完成した橋桁は国内最大の大型クレーン船「海翔(かいしょう)」で現地に輸送。陸地につながる両端部から設置し、最後に中央部を架けた。現地は風と波が強い海峡。荒天では作業員の安全確保が難しい。天気が回復しても風と波が残れば作業はできず、何度も延期を余儀なくされた。最終的には当初日程の10月11~19日から約1カ月ずれ込んだ。
最終日はアーチ状の中央部を両端部に接続した。クレーンでつるしながらのミリ単位の作業で、陸上と海上から作業員が慎重に調整した。町生涯学習センターでは工事の様子を5時間にわたってライブ配信。住民や女川小中の児童生徒ら計約300人がモニターを見つめた。接続が完了した瞬間は拍手が巻き起こった。
■環境保全に配慮
徳永監理技術者は「細かい工事はまだ続くが、大がかりな部分が無事に終わって良かった」と語った。
注目を集めた架設作業だけでなく、接続道路の整備も架橋事業の一部だ。工事エリアは三陸復興国立公園に含まれるため、環境省などと協議しながら進めた。本土側の尾浦地区から橋に向かうルートにはヨシの群生地や準絶滅危惧種に指定されているトウホクサンショウウオの生息地もあり、環境保全への注意が必要だったという。
開通に向けては今後、橋と接続道の舗装や、強風で通行止めにする時のゲートなどを整備する。町建設課の佐藤司課長は「現場見学会で島民が熱心に質問する姿を見て、期待値の高さを感じた。最後まで事故なく工事が終わることを祈りたい」と話す。
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