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達人、辰人2024 (6) 伝統工法 木組大工・小形圭一さん

難解なパズルを追究

小形さんが建てたギャラリー。内装も含めて、小形さんの作品だ

 石巻市大原浜の自宅近くに作業場とギャラリーを構える木組大工小形圭一さん(69)は、伝統の木工技術「木組」を極め続ける。

 一口で言うと複雑な立体パズルのよう。設計、部品作り、組み立て、多様な一連の工程を1人で担う。それだけでも難解な作業なのに、独自の組み立て方を追究し、作品に向き合い続ける。

 可能な限りくぎやボルトなどの金物を使わずに建物や家具を造る伝統工法。のこぎりやのみ、かんなで木材に凹凸を付け、ほぞやほぞ穴などを作る。「ほぞ」だけで何種類もある。骨組みとなる木材をくぎなど金属の経年劣化から守ることができるのも強みだ。

 金物や電動工具もない時代に建てられ、1000年以上美しさを保つ法隆寺(奈良県)などに感銘を受け、25歳の時、独学で木組の技術を学び始めた。中学校を卒業後、大工の職に就いた当初はくぎなどの金物を使って施工をしていたが、木のぬくもりが失われる違和感を覚えたからだ。神社や寺院で構造を観察したり、模型を造ったり、一人研究を重ねた。

 デザインに自然の造形美を生かす。使う木材に、あえて曲がったものを選ぶ。強度が高い上に、作品にぬくもりを与えてくれる。木材に一つとして同じものはない。試行錯誤を繰り返す。「自分の手で造り上げる達成感が魅力。大変だが、好きだから続けられる」

 東日本大震災は伝統の継承や木造建築の保存について考える契機となった。手がけた建築物は震災で壊れたり、津波で流されたりした。被災した同市谷川浜の洞福寺子育地蔵堂は昨年9月、ようやく再建にこぎ着けた。伝統技術を残したいという思いが強まった。

 その舞台がギャラリー。高さ6.5メートル、広さ約116平方メートル。技術の粋を集め、約半年かけて建てた。「興味のある人はぜひギャラリーへ来てほしい」と呼びかける。

 作業場に響くリズミカルな金づちの音、心地よい木くずの匂い、木目の美しさ。伝統技術が牡鹿半島にある。活動の賛同者を募り、技術の魅力を広める方法を探る。小形さんはさらに難解なパズルに挑む。
(渋谷和香)

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