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いしのまき食探見 > おくずかけ うまみじわり、古里の味

10種類以上の具材が入ったおくずかけ。セリの香りが食欲をそそる
多くの具材を切り、おくずかけを作るコメカフェの高橋さん

 海と山とで育まれる豊かな石巻地方の食材。伝わる文化と技を生かした郷土の「食」を紹介する。

おくずかけ

 寒さが厳しさを増すこの時季は、汁物で温まりたくなる。石巻地方でもおなじみの郷土料理「おくずかけ」が恋しくなる人も多いだろう。県外出身の記者はおくずかけを知らなかった。どんな料理で、どんな味なのか調べてみた。

 郷土料理に詳しい石巻市食生活改善推進員連絡協議会の佐藤清子会長(66)に話を伺った。佐藤さんによると、具材はジャガイモや油揚げ、豆腐など「なんでもいい」。県南では「白石温麺(うーめん)」を入れることが多い。麺を入れたものは食べるときにずるずると音が立つことから「ずるびき」とも呼ばれる。

 同市小船越の「川の上・百俵館」内のコメカフェでは、全てのランチメニューにおくずかけが付く。干しシイタケや豆麩(ふ)、ニンジンなど10種類以上の具材を、昆布だしとシイタケの戻し汁で煮込む。春は裏山で採れたタケノコ、秋はサトイモなど旬の食材を入れる。味付けには色が澄んで仕上がるという「色なししょうゆ」を使う。片栗粉でとろみを付け、最後に旬のセリを散らす。

 1杯いただいた。具材のうまみが染み出たやさしい味わい。程よいとろみの汁が冷えた体に染み込んでいく。思わず頬が緩んだ。

 以前は汁物は日替わりだったが、おくずかけ目当ての来店客も多く、3、4年前からは毎日提供しているという。店主の高橋信子さん(77)は「なつかしい味と喜んでもらえるのがうれしい」と笑顔で語った。
(石井季実穂)

<メモ>
 おくずかけは宮城県の郷土料理。秋の七草の一種「クズ」の根で汁にとろみを付けることから名が付いた。今は片栗粉を代用することが多い。葬儀の際やお盆、彼岸などの精進料理として振る舞われるほか、寒い季節などの日常の料理としても好まれる。

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