ブルーインパルス搭乗記(4) タクシーアウト(地上滑走開始) 常に足でブレーキ操作
【元航空機整備士・添田潤】
全機作動点検が終わったころを見計らって1番機が着陸滑走灯を点灯させる合図を出します。着陸滑走灯を点灯させるとそれが車輪止めを外す合図となり、整備士が車輪止めを外します。同時にキャノピー(天蓋(てんがい))を閉めます。
■車輪止めを外す
左手でロックハンドルを前に倒し機械的にロックします。警告灯と左側にあるインジケーターで完全にロックしたことをダブルで確認します。ロックする瞬間空調が効いて鼓膜を押される違和感を覚えます。その後1番機は管制塔に地上滑走の許可をもらいます。管制塔は離陸方向、現在の気圧、風向風速などを返します。
1番機から順にタクシーアウト(駐機場から誘導路に向かって動き出す)していきます。2番機、3番機に続いて私の乗る4番機もタクシーアウトします。スロットルはアイドリングのままでもブレーキを離すと前進します。3番機に追従するため左に曲がります。
足で踏む形の方向舵(ほうこうだ)に付いたブレーキペダルは左側を踏むと左の車輪が、右側を踏むと右の車輪がそれぞれ単独で効きます。左に曲がるときは左側のブレーキを強めに踏むと左側に偏向していきます。
これに加えて操縦桿(そうじゅうかん)を握って小指で押すボタンを押すと方向舵の操作角が前輪のステアリング(かじ取り装置)と連動するようになっています。これら両方を使って曲がっていきます。左右のブレーキの踏み具合で方向を変えることができますが、わずかな違いでも左右に蛇行するため真っすぐ地上滑走するだけでも大変です。
エンジンの出力がアイドリングであってもブレーキを離したままだとたちまち時速60キロ以上になってしまうので常にブレーキを操作しています。地上滑走はパイロットの腕にかかっているのではなく足にかかっているのです。
今回は仙台方面に向かって離陸するためいったん石巻方面に地上滑走します。
誘導路を滑走しているとき、操縦者が手を振ったりしてくれるのを外柵から見ると、何もしていないように見えますが、このブレーキ操作に加えエンジン計器、油圧計器、航法計器の点検、フラップ(高揚力装置)、車輪の支柱のロック状況を示すインジケーターの確認などをしています。
機体に乗り込んだときに装着したシートベルトやGスーツのほか酸素系統やサーキットブレーカー(過電流遮断器)の確認、離陸時の諸元を読み上げなど。
■気緩む瞬間なし
一通り終わるとまた最初から確認を繰り返します。点検にこれでいいという概念はなく、常時点検し気の緩む瞬間は感じられません。これらを行いながら編隊を組んで地上滑走を続けていきます。
滑走路に入る手前ではキャノピーのロックの確認、射出座席の安全装置の解除、スモークを出すためのポンプの作動、VTRの作動の確認を無線で6機順番に確認していきます。ただ聞いていると早口言葉の伝言ゲームのように感じられます。
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