いらっしゃいませ ＞ 理容ワダ（石巻市中央１丁目）

• 
• 
• 

＜街に情熱　「わがままに」＞

　外壁にちょこっとプリントされたキャラクターが気になり、店にお邪魔した。しかめっ面ながら、どこか愛嬌（あいきょう）がある絵。聞けば往年の人気少女マンガ「スマッシュをきめろ！」の志賀公江さんの作だという。

　石巻市で１００年続く理容店。３代目和田長平さん（７５）は迷いのない手つきで客のひげをきれいにそり上げる。「理容一筋というより波瀾（はらん）万丈。何屋をやってきたか分からない」

　和田さんは活動的な人。蛇田出身の弁護士布施辰治をたたえる市民団体設立にも奔走した。壁の絵も和田さんが石ノ森萬画館開館に関わった際、志賀さんが箸袋に描いたものを大きく印刷したものだという。

　東日本大震災で被災。閉店を考えたが、町内会で活動するうち「みんなで頑張ろう」と再開を決意。中央の商店街の再建時に市民中心のまちづくり団体の委員長を務めた。「生まれ育った街に愛着がある。離れる気は起きなかった」。突き動かしたのは街への愛だ。

　熱意余って、他の活動でふらっと店を空けることもある。「石巻で１番わがままな理容店」を名乗るが、カット代は大人２５００円。震災直後から据え置いている。どこまでも街に情熱を注ぐ。
（西）