ブルーインパルス搭乗記(5) 離陸 出力最大、腰と胸を圧迫
【元航空機整備士・添田潤】
滑走路に入る手前で1番機が滑走路に進入に必要な無線周波数に変更する指示を出します。1番機は全機が周波数を変えたことを確認するため「ブルーインパルスチェック」と問いかけ「ツー、スリー、フォー、ファイブ、シックス」と各機応答します。
管制塔に滑走路に入る許可を取ったのち、飛行場訓練の訓練周波数に変更し、滑走路に進入します。私の乗る4番機は2番機の左後方に位置して停止しますが、毎回1番機が風向、風速から判断して2番機の左後方に付くか3番機の右後方に付くか指示を出します。
端が見えないくらい長い滑走路に機首の方向を合わせ止まります。ちょうど着陸する時にタイヤが接地する場所でタイヤのゴムの跡が滑走路一面に広がり真っ黒になっています。
■計器を読み上げ
1番機のハンドシグナルで左のエンジンから最大出力のチェックをします。ゆっくりとスロットル(エンジン出力レバー)を進める感じではなく、無造作に最大出力まで進めてエンジンの回転数がついてくるのをチェックしながら排気温度計、燃料流量計、油圧計を一瞬で読み上げます。
空調が若干脈動し耳の鼓膜を押します。左のエンジンのチェックが終わったら左のスロットルをアイドリング位置に戻すと同時に、右のエンジンのスロットルを無造作に最大出力に進めます。左エンジンと同様にチェックしますが最後にスモークチェックを行いアイドリングに戻します。
これが終わったらブレーキをいったん離し、機体1機分の長さくらい前に進みます。ブレーキが固着していないか確認するためです。点検に点検を重ね確実の上にもさらに確実を積み上げていきます。
通常は4機のブルーインパルスが密集したフィンガーチップ(手の爪の隊形、私の乗る4番機は左手の小指の爪の位置)のまま、離陸滑走し離陸直後に2番機の下をかすめて1番機の後方に付いてダイヤモンド隊形(ひし形隊)になりますが、今回は風が強いため1番機に続いて5秒間隔で単機で離陸し空中集合する方式を取ります。1番機に続いて5秒遅れて2番機が、さらに5秒遅れて3番機が離陸します。
■回転数上げ待機
左右のエンジンを80%に進めて時を待ちます。エンジンの回転数は車のエンジンでいうところのレットゾーンに入る回転数を100%として表します。
左右のエンジンを100%にしないのは、エンジンの出力が大き過ぎタイヤがロックしたまま前に出てしまいタイヤがパンクしてしまうからです。飛行機のタイヤは車よりはるかに高い圧力がかかっているため空気が抜けるパンクではなく物理的爆発を起こします。最悪の場合破片が主翼を突き破り燃料タンクに達する場合もあります。
3番機が離陸開始5秒後ブレーキを離すと同時に両エンジンを最大出力にします。車の場合、頭が後ろに引っ張られる加速感ですがブルーインパルスはこれに加えて、腰を押される感覚が加わります。着用しているライフジャケットが胸を押す形になり息苦しさを感じます。
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