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ブルーインパルス搭乗記(8) チェンジオーバーターン 縦1列から傘型編隊に

縦1列の隊形から傘型編隊に移行するチェンジオーバーターン(静岡県の写真愛好家・鈴木智子さん撮影)

【元航空機整備士・添田潤】

■操縦系統を点検

 ひし形編隊で右旋回するファンブレーク終了後、三陸沿岸道の鳴瀬大橋付近を北西に向かい同級生の家がこの辺だなと思っていた時、操縦者が「コントロールチェックします」と言った瞬間早いレートで180度回転し上下逆さまになります。

 コントロールチェックとは操縦系統が正常に働くか、操縦席内に異物が落ちていないかなどを点検することです。併せて自分の体にG(重力)をかけて体の調子も点検します。体の調子が悪いとせき込んだり視野が狭くなったりします。

 上下逆さまになると、太ももと下腹部を締めたラップベルトに全体重とヘルメットやライフジャケットなどの重さが一気にかかります。背骨の椎間板が引っ張られ隙間が空いたようになる感覚です。

 その後、また早いレートで180度回転し元の状態に戻るとともに5Gの左旋回を開始します。今度は上半身の体重とヘルメットやライフジャケットの重さが一瞬にして5倍以上になって椎間板に空いた隙間をつぶします。脊椎がダルマ落としになった感じです。

■顔がパンパンに

 同時にGスーツに空気が流入します。ファンブレークの時のじわっとした流入ではなく、腹部にボディーブローを食らったようなボスっという感じで流入し、太ももとふくらはぎが締め上げられ、下半身の血液が上がってきて顔がパンパンになります。

 松島湾に向かったところで水平飛行に戻ります。操縦者が「大丈夫ですね」と軽く聞いてきました。「大丈夫です」と答えたものの「大丈夫ですか」って聞いてくれよと言いたかった。

 コントロールチェックが終わり、チェンジオーバーターン(水平旋回中に縦1列の隊形から傘型編隊に移行する課目)の準備に入ります。松島湾に出る頃、航空祭の会場となる飛行場では、5番機が4ポイントロール(低空飛行をしながら90度に区切って横1回転する課目)をしています。東名運河の上を飛ぶように左旋回を始めながら、1番機から私が乗る4番機まで縦1列のトレイル隊形を取りますが、気づかないうちに6番機が私たちの後ろに付いています。

 東名運河と平行に飛行しながら5番機の演技が終了し会場を離脱するのを待ちます。減速、ましてや一時停止をすることはできませんから、1番機はそれを見越して飛行しています。鳴瀬川を通過し北上運河と平行に飛行する頃、縦1列の全機がスモークを引きますが、高度差があるためスモークの中を飛行することはありません。

■会場上空で合図

 会場上空に差し掛かった時、1番機の合図で右旋回を開始すると同時に左上に跳ね上がります。6番機は右下に弾かれる感じになり大きな傘型隊形となります。勝手に広がるのではなく左右対称に前後のバランスよく広がったまま水平旋回を始めます。厳密には水平旋回ではなく会場から一番遠い場所が若干高度が高くなっています。

 1番機の合図で徐々に左右対称に密集した傘型編隊へ移っていきます。密集隊形に戻る会場上空では元の高さに戻ります。会場から一番遠い所を高くすることによって会場から見ると水平旋回に見えるそうです。

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