震災発生時刻のサイレン、遺族らに配慮し低音に 聞こえづらさなど指摘も 石巻市は模索継続
東日本大震災から13年を迎えた11日、石巻市は地震発生時刻に市内全域で鳴らしたサイレンを従来よりも低い音に変えた。震災当時を思い出して心が苦しくなるという遺族らに配慮した。市民からは「穏やかな気持ちで祈れた」と歓迎する声が上がった一方で、「高い音よりも危機感が薄れる」といった指摘もあった。被災者の心情に寄り添いながら震災の教訓を伝えていくため、「祈りの日」の在り方の模索は続く。
震災で多くの檀家(だんか)が犠牲になった同市門脇町2丁目の西光寺住職の樋口伸生さん(61)は昨年3月「遺族らがPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症する。音を変えてほしい」と斎藤正美市長に要望していた。低音に変更されたことについて「心の復興の道のりに寄り添う行政の優しさを感じた。ただし、もっと柔らかで優しさに満ちたメロディーにしてほしい」と語った。
西光寺の墓地でサイレンを聞いた同市南境の会社員佐藤淳也さん(59)は、兄やその妻ら親族13人を亡くした。「昨年より落ち着いた音にはなったが、もう少し考えられるのでは。でも、震災が忘れられてしまうよりはいい」と複雑な心境を語った。
「当時を思い出して苦しむ人が少なくなるので良いと思う」と語ったのは旧大川小の追悼行事「大川竹あかり」に参加した同市針岡の看護師佐藤晴香さん(29)。一方で「お年寄りには聞こえづらいかも」とも。別の参加者からは「昨年までより危機感が薄れるような気がする」との危惧も聞かれた。
日和山で黙とうした市民からもさまざまな意見が上がった。同市中里1丁目の会社員高橋成美さん(25)は「昨年まではサイレンで心がざわざわした。音が低いと落ち着いた気持ちでお祈りに集中できる」と歓迎。同市泉町3丁目の無職石原雄二郎さん(70)は「音が低いと聞こえづらかった。建物内はもっと聞こえないのではないか」と話した。
市によると、サイレンは犠牲者の追悼とともに、震災の風化を防ぎ、防災意識を高めるために鳴らしている。市震災伝承推進室の担当者は「昨年までと比べると落ち着いて聞ける音だったと思う。サイレンに関する市民からの問い合わせの有無や内容を確認し、来年以降どうするかを検討していきたい」と語った。
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