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ブルーインパルス搭乗記(10) チェンジオーバーループ 宙返り後、ひし形隊形に

縦1列の隊形で宙返りをしながら、ダイヤモンド隊形に移行するチェンジオーバーループ(静岡県の写真愛好家・鈴木智子さん撮影)

【元航空機整備士・添田潤】

 傘型編隊で宙返りを行い、後半に大きく散開するレインフォールを終了し、航空祭の会場となる飛行場北側に1番機から4番機までの4機が空中集合する間に、5番機はバーティカルクライムロール(低高度高速で会場に進入し上空で急上昇、らせんを描きながら高度3000メートルまで上昇する課目)を行います。その後6番機はスローロール(会場上空をゆっくりと横回転する課目)をしています。どちらも私には操縦方法が分からない課目です。

■排気避け高度差

 チェンジオーバーループは、縦1列の隊形で宙返りをしている間に、ひし形隊形(ダイヤモンド隊形)に移行する課目です。

 基地の北側で大きめなひし形隊形に空中集合した後、1番機の合図で縦1列のトレイル隊形になります。1番機から4番機まで前後方向に縦1列になるわけですが、エンジンの排気を避けるため垂直尾翼の高さ分高度差を取っています。

 このため私が乗る一番後ろの4番機から見ると上下方向にも縦1列に見えます。この状態で三陸沿岸道を通過したあたりからスモークを出し始め、基地上空で1番機の合図で宙返りを開始します。

 上昇中に1番機の合図でダイヤモンド隊形に移行します。2、3番機がゆっくりと1番機の主翼の下に潜り込むように主軸線から離れていきます。4番機は主軸線から離れず、2、3番機の間に入りつつ1番機との間隔を詰めていくため、微妙な推力調整が必要です。

 ブルーインパルスの機体には2基のジェットエンジンを搭載しています。推力を調整するスロットルレバーも2本あります。両方のスロットルレバーを同時に動かすと推力変化が大き過ぎるため、左右のスロットルレバーを1本ずつ微妙に交互に動かして調整しています。

■2番機の腕重要

 隊形を美しくできるかどうかは2番機の腕にかかっています。3番機は1番機を基準に2番機と対称的に位置します。4番機は2番機と3番機の見え方を基準にします。2番機の位置によって編隊が大きくなったり小さくなったり、長くなったり短くなったりするので非常に重要になります。

 ダイヤモンド隊形への移行が完了したころには宙返りの頂点に来ていて上下が逆さまになりますが、G(重力)によりあまり違和感はありません。頂点が過ぎ逆転した地上が見えたころから1番機の合図で隊形を保持したまま右にひねり、野蒜の方向に向きを変えます。滑走路が反時計方向に回る錯覚に陥ります。

 主軸線上の1、4番機はそのままひねりますが、2、3番機は1、4番機と1枚の板のように付いてきます。鳴瀬川手前でスモークを切り、鳴瀬川を上流側に向かう形で大きく右旋回をしながら次の課目の準備に入ります。

■国防力の誇示も

 次の課目に入るまでの間、5、6番機はハーフスローロールを行っています。横に並んだ2機が1枚の板の状態でゆっくりと反転し背面になったのと同時に、左旋回をして離脱する課目です。比較的地味な課目ですが、これは観客を魅了するよりも諸外国の戦闘機操縦者に日本の操縦者の技術を見せるものです。ブルーインパルスの課目は華麗なだけでなく国防力を誇示するものでもあります。

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