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ブルーインパルス搭乗記(11) レターエイト 水平旋回で8の字描く

水平旋回で8の字を描くレターエイト(静岡県の写真愛好家・鈴木智子さん撮影)

【元航空機整備士・添田潤】

 縦1列からひし形隊形(ダイヤモンド隊形)に移行する「チェンジオーバーループ」の終了時、航空祭の会場となる飛行場の北側に向かいます。5、6番機のハーフスローロールの終了するタイミングを計りながら大きく減速します。レターエイト(水平旋回で8の字を描く課目)の開始速度が比較的低速なためです。

■背骨が軋み出す

 5、6番機のハーフスローロールが終了後、比較的低速でダイヤモンド隊形で会場北側から進入します。滑走路を過ぎたあたりで1番機の合図でスモークを出し、洋上に出て1番機の合図で1~3番機はそのままの速度で大きめの右旋回を、私の乗る4番機は最大出力最大荷重で左旋回を、それぞれ開始します。

 途端に失速警報が鳴り、機体全体が振動し出すのを力で抑え込むような形で加速度を旋回荷重に換えていきます。またもや背骨が軋(きし)み出し、酸素マスクのホースもG(重力)により引っ張られます。顔をつかまれ、下に引っ張られる形になり、顔が長くなった感じがします。Gスーツに入る空気圧も高圧になり、ふくらはぎと太ももを痛いくらいに締め上げます。

■深い呼吸を維持

 息が浅くなるとG-LOC(ジーロック、脳への酸素供給量が減り意識を失うこと)に陥りやすくなるため「強く短い腹式呼吸を心掛けよ」と教育されます。前席操縦者は強く短く、そして深く呼吸をしますが、腹筋がGスーツの圧力より弱い私はいったん息を吐いたらおなかを膨らませられないくらいに締め上げられます。

 何とか耐えているうちに左旋回が終了します。自分たちが左旋回を開始したところにスモークと乱気流が残っていて、そこを通るとき機体が弾かれるように振動します。同時に右旋回に移行するため、左側を下にした姿勢から右側を下にした姿勢に移り変わります。Gがすっと抜け軽くなった途端、右旋回を開始し、先ほどと同様のGがかかってきます。この状態で石臼状態の頸椎(けいつい)を回し、1番機を目指します。1~3番機は通常より大きなダイヤモンド隊形を取って、旋回しています。この旋回の内側を通って高速高荷重で1~3番機を目指します。

■スモークを交代

 JR仙石線鹿妻駅前に先代のT2超音速練習機のブルーインパルスが展示してあります。この航空機でこれだけの旋回を継続すると、速度が落ちてGが抜けていく感覚がありますが、現在のブルーインパルスは逆に加速していくため7G近い荷重が続きます。

 1~3番機に近づき、追い抜いてしまうのではないかと心配になります。少しスロットルを戻しただけでショルダーハーネス(シートベルト)が肩に食い込むくらいの制動感があり、改めて空気抵抗の大きさに驚かされました。正規の4番機の位置に付くため、1番機のスモークの中を通る際、前席操縦者が「ノーマル」と無線で連絡します。1番機がスモークを切り、4番機が交代してスモークを引いてタイトなダイヤモンド編隊に移行し、レターエイトは終了します。

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