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元校長、思い語る 教員生活振り返り 久保田健一さん、杉山孝一さん

久保田健一さん
杉山孝一さん

 3月末、役職定年で校長職を退いた石巻市内の元小中校長の2人に、長年にわたる教員生活を振り返り、学校づくりや教育に対する思いなどを聞いた。(浜尾幸朗)

湊小 久保田健一さん

<子どもの良さ伸ばして>

 「子どもたちと一緒に活動しながら、一緒に学び合って成長してきた」。37年の教員生活で「子どもたちの気持ちを大切にし、いつでも前向きな気持ちになれるよう指導してきた」と優しいまなざしで語る。

 教諭時代の思い出として、旧牡鹿町谷川小に4年間勤めた経験が強く印象に残っている。「自然豊かで海や川、山での活動を一緒に体験しながら、古里の大切さを伝えることができた」

 常に子どもの心に寄り添い、良さを引き出すことを念頭に真摯(しんし)に向き合い、健やかな成長を支えてきた。

 東松島市出身。宮城教育大卒。女川一中を振り出しに女川一小、山下小、石巻小などに勤務し、門脇小教頭、石巻市教委指導主事、向陽小校長などを経て、2021年から3年間、湊小校長を務めた。

 湊小では「敬愛(あいさつを大切に) 進取(いろいろなことに挑戦しながら学習に取り組む) 力行(体をよく動かしながら粘り強く物事に当たる)」の校訓を中心に学校づくりに当たった。

 その基本として、子どもの社会性を育むため、日本版の包括的生徒指導プログラム「マルチレベルアプローチ(MLA)」を取り入れ、友達の気持ちや場の雰囲気を考えた行動ができるようになったという。

 「教育とは人磨き。いかに社会で自立できるよう、育てていくかが大切。教員は子どもたちをかわいがり、いい面を見つけて伸ばす」

 役職定年後、あと1年、一般教諭として聖職に臨む。「原点に戻り、成長を支える」と意気込む。

住吉中 杉山孝一さん

<失敗を恐れずに挑戦を>

 35年の教員生活のうち社会教育行政を11年経験。人と人との関わりの大切さを心に刻み、地域とともに子どもを育てる学校づくりを実践した。

 石巻市出身。東北学院大卒。旧鳴瀬町鳴瀬二中を振り出しに、旧白石市白川中校長、志津川自然の家所長、山下中校長、2022年から2年間、2度目の勤務となる住吉中で校長を務めた。

 「今の子どもは学校と家での時間がほとんどで、人と触れ合いながら多様な経験をさせたいと思った。多様な価値観に触れることは、生徒の成長や人格形成にとって大事なこと」

 同校は2年生を対象とした職場訪問や「地域の方々の話を聞く会」など、社会と接する機会を創造した。「中学生は多感で成長が著しい。職業、世代の違う人と関わることで視野が広がり、多様な視点に刺激を受けたのではないか」

 市の総合防災訓練に合わせて昨年11月に学区内で実施された自主防災訓練に、生徒が「炊き出し」などの役割を担い参加した。町内会長と顔の見える関係をつくり「地域の一員としての自覚が芽生えた」。

 教育目標は「夢に向かってたくましく生きる住中生」。「自分の目標に向かって失敗や挫折を恐れず挑戦してほしい。人や社会と積極的にかかわり、それぞれのステージで輝いてほしい」と期待する。

 雄勝小と旧大須中で講師の経験があり、将来勤めたいと思っていた夢がかない、雄勝中教諭として1年間、教壇に立つ。「子どもと接するのが楽しみ。成長を間近で感じたい」

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