貴重な資料、関心呼ぶ 石巻市博物館で二つの特集展 ラベルデザイン、人道主義弁護士・布施辰治
石巻市開成の市博物館(市複合文化施設内)は二つの特集展を常設展示室で開いている。毛利コレクションと人権派弁護士・布施辰治をテーマにした展示で、珍しい資料などもあり市民の関心を呼んでいる。
明治後期~大正のマッチ産業、変遷分かるラベル450点
毛利コレクション特集展はマッチラベルをテーマに展示。明治時代後期から大正期にわたって隆盛を極めた日本のマッチ産業の歴史をラベルの変遷でたどると同時に、印刷技術の発展に伴うデザインの多様化も知ることができ、見て楽しい特集展になっている。
毛利コレクションは、石巻市生まれの毛利総七郎(1888~1975年)が収集した歴史、民俗関連などの資料の総称で、10万点を超えると言われる。そのうち8万2000点以上がマッチラベル。このうち450点余を展示しており、本格的なマッチラベル展は初めて。
興味深いのが広告マッチのラベル。パチンコや喫茶店などのほかに演劇や映画スターをデザインした珍しいラベルもある。資生堂が1916(大正5)年に意匠部を新設しフランス調のデザインを目指したことも紹介、マッチラベルが企業の宣伝に大きな役割を果たしていたことが分かる。東京オリンピック(64年)記念マッチもあり、総七郎の収集にかけた情熱が伝わってくる。
学芸員の佐藤麻南さん(31)は「12、13歳の頃から集め始めたと記録が残っている。総七郎のコレクション形成のきっかけの一つになった」と強調する。
会期は7月7日まで。
人権派弁護士・布施辰治、家族の姿や日常を紹介
第2回布施辰治特集展「布施辰治と家族の肖像」は、石巻市出身の人権派弁護士・布施(1880~1953年)と家族の様子を貴重な写真や肖像画などで紹介、在りし日の布施一家の姿をしのぶことができる。
布施は社会的弱者や植民地時代の朝鮮半島や台湾の人々に寄り添い、権力による弾圧に屈することなく人権擁護に奔走した弁護士として語り継がれてきた。
特集展はあまり知られていない日常の布施に光を当てている。肖像画では布施本人をはじめ妻・光子や三男・杜生も描かれている。写真には布施一家(1916年)や晩年の布施夫妻が写っている。合わせて20点余だが、つましく暮らした布施とその家族の姿が捉えられている。
リーフレットとして「思い出の布施辰治」を配布。1953年12月、長男・丙午(後の柑治)らによって制作された幻灯スライドによる作品を、市博物館が特集展に合わせて冊子化、布施の活動と家族の足跡を文と写真で浮き彫りにしている。
学芸員の伊藤匠さん(29)は「布施関連の資料は約5000件に上る。今後も石巻が生んだ人権派弁護士・布施の功績、人柄を市内外に発信したい」と話す。
会期は8月12日まで。5月8日に一部、展示替えする。
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