イサダ漁、漁獲ゼロでシーズン終了 3月末で継続断念 海水温上昇、県沿岸に群の姿なし
県沿岸のイサダ漁は漁期を半分残した3月末で継続を断念し、漁獲ゼロでシーズンを終えた。漁獲ゼロに終わるのは初めてとみられる。海水温の上昇で県沿岸に群れが姿を見せなかったのが原因で、県小型漁船漁業部会は「本格的な春を迎える4月になっても漁場の環境が改善される見込みはない」と判断、今期の操業打ち切りを決めた。
イサダは体長2センチ余りのオキアミの一種で、ふりかけをはじめとする食料のほか、養殖や釣りの餌としても使われる。石巻や女川の魚市場に、桜色のイサダを積んだ漁船が入港する姿は春の風物詩になっていた。
女川魚市場によると過去10年で最も水揚げがあったのは2015年の5000トン。以降は減少傾向にあり、昨年は半分以下の約2000トンに終わっていた。
県漁協は今期のイサダの漁獲枠を例年と同様に1万5000トンに設定し3月1日に操業を解禁、漁期を最長で4月末とした。
しかししけ続きによる休漁や、出漁しても空振りに終わるケースが目立ち、好転する兆しが見えなかった。このため25日に小型漁船漁業部会が会議を開催。この先も成果は望めないとして全船の操業打ち切りを決めた。
県漁協寄磯前網支所の組合員で小型漁船漁業部会の部会長を務める遠藤仁さん(65)は「漁を続けても船の燃料や人件費などがかさむため見切りを付けた」と理由を説明。
他の魚種への切り替えの可能性については「そもそも高水温で捕れる魚がなく、新しい漁をするには経費がかかる。今期は高温の影響を受けにくいマダコを捕ったがずっと続くか分からない」と苦悩を語る。
今期はコウナゴも不漁で休業した。
漁業者だけでなく加工会社からも嘆く声が聞こえる。水産加工会社「木の屋石巻水産」(石巻市)の平塚善海取締役製造部長は「缶詰めに使用する金華さばに加え、春漁の不漁でダブルパンチだ。イサダについてはこの状況が続くと、取引先との縁がなくなってしまうのではないかという不安もある」と話す。
県水産技術総合センター(同市渡波)は不漁の原因について、寒流の親潮が南下しない点を指摘する。
イサダは親潮の周縁に魚群を形成する。今年は親潮の勢力が極めて弱く、2、3月にセンターが行った調査では、女川湾から気仙沼沖の表面水温が平均16.9度と、昨年同期と比べ9.2度も高かった。親潮の勢いが岩手県北部沖までしかないという。
担当者は「親潮の強い南下が2、3年続かないと水揚げの回復は難しい」と話している。
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