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いしのまき食探見 > ホタテ 不屈の漁師魂が隠し味

物産直売所では年間を通して活ホタテを販売している
伝八寿司で提供している「ホタテ丼」(左)。雄勝産ホタテの濃厚な甘みを味わえる

 海と山とで育まれる豊かな石巻地方の食材。伝わる文化と技を生かした郷土の「食」を紹介する。

ホタテ

 貝殻をヘラでむくと、ぷりっと育った貝柱がお目見えした。丁寧に包丁が入った刺し身がつやつやと輝く。まずは本来の味わいを確かめるため、しょうゆを付けず口に運ぶと、濃厚な磯の香りと甘みが広がった。

 ホタテの産地として知られる石巻市雄勝地区。4月中旬、観光物産交流館「おがつ・たなこや」を訪ねた。物産直売所のいけすには、湾内から水揚げしたホタテがぎっしり。年間を通して活貝を購入できる。

 直売所隣にある「伝八寿司」の親方・加納竜司さん(54)に特別にさばいてもらった。「雄勝のホタテは甘さが違うんだ」。周辺の山々から養分が川で運ばれ、雄勝湾に注ぎ込んでうま味を育む。一つ一つの貝に栄養が行き渡るよう、漁業者は養殖ロープの密集を避けるなど品質管理にも気を配っている。

 東日本大震災を乗り越えてホタテ漁業を再興させた雄勝地区を昨年夏、再び試練が襲った。記録的な猛暑で湾内の水温が高止まりし、高水温に弱いホタテが次々と「へい死」した。

 それでも漁業関係者らは「状況は厳しいが、震災の時のようなマイナスのスタートではない」(県漁協雄勝湾支所の阿部貴之支所長)と、前を向いて生産に励む。不屈の漁師魂が、甘い甘いホタテの隠し味になっている。
(都築理)

<メモ>
 雄勝地区では25経営体がホタテ養殖に取り組む。北海道から搬入する生後約1年半の「半成貝」を湾内で育てて、主に8月中旬~12月に水揚げする。流通は国内中心で出荷量は年間2000トン前後。2023年は高水温被害のため約560トンに落ち込んだ。

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