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震災遺構・門脇小、本年度初の「語り部の話を聞く会」 当時教頭の佐藤さん、津波火災の体験伝える

津波火災が迫る校舎から避難した当時の状況を語る佐藤さん(中央)

 石巻市の東日本大震災遺構「門脇小」で18日、震災経験者が津波の恐ろしさや被災の教訓を伝える「語り部の話を聞く会」が開かれた。本年度1回目で、震災当時に旧門脇小の教頭だった佐藤裕一郎さん(71)が、津波と火の手が迫る校舎から地域住民と共に避難した体験を語った。

 佐藤さんは児童や多くの教員が高台に避難した後、保護者が来校した場合の連絡要員として学校にとどまった。校庭よりやや高い体育館入り口近くにいたところ、土煙を上げて押し寄せる津波を目撃した。校庭に走って住民らに知らせようと叫んだが「恐ろしさで声が出なかった」と語った。

 校舎内に急いで避難を始めたが、脚の悪い高齢女性に「置いていってくれ」と言われたという。「命の瀬戸際で何とも言えない感情だった。しかりつけるようにして連れて行った」

 炎を上げた家屋が押し流されて来て、校舎にも燃え移り始めていた。逃げ道を探し、2階から教壇を橋代わりにして裏山に渡し、その場にいた全員が避難できた。

 佐藤さんは「たまたま津波の見える場所にいて、たまたま教壇を使うアイデアが出たから命を永らえることができたと思う」と強調。「災害はさまざまな状況で起こる。日常的にシミュレーションしておくことが、いざという時の応用力になる」と呼びかけた。

 聞く会には県内や東京から7人が参加した。転勤で4月から仙台市で暮らす会社員男性(26)は「学校が児童と住民の両方を抱えることの難しさを感じた。津波と火災が同時に迫るリスクも初めて知った」と話した。

 語り部の話を聞く会は2022年度から実施。本年度は7、8、9、11月、来年1月にも開く。昨年度開催した語り部・伝承者育成講座の受講者も新たに語り部を務める。

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