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いしのまき食探見 > キュウリ はじけるみずみずしさ

キュウリのサラダ(左)と、白だし・酢のあえ物
生き生きとした枝から生えるキュウリ。大きく咲いた花からは大きな実がなる

 海と山とで育まれる豊かな石巻地方の食材。伝わる文化と技を生かした郷土の「食」を紹介する。

キュウリ

 いしのまき農協管内はキュウリの生産量県内2位を誇り、年間約1302トンを出荷する。最多品種の埼玉原種「まりん」を栽培する星義典さん(70)=石巻市蛇田=の生産現場を訪れた。

 約2000平方メートルの大型ハウスの中は、背の高さほどの枝が見渡す限りに広がる。すぐに汗ばむ暑さだが「今はまだまし。夏の作業は大変なんだ」と星さん。笑いながら、近くのキュウリをもいで渡してくれた。

 深緑色の表面はしっかりと堅い。かすかな弾力に凝縮されたみずみずしさを感じた。真っすぐ育った実を二つに折ると、パキッと気持ちのいい音がした。今にも水がしたたりそうな断面をかじり、口の中で広がった甘さに驚いた。後に残る青々とした香りに嫌みはなく、「これがキュウリの味なのだ」と実感した。

 星さんは2月中旬に作付けし、4月初旬に収穫を始める。魚かすなどを含む栄養豊富な有機肥料を使い、最盛期まで元気な実が取れるという。生産を始めて45年。培った知恵と工夫、長年の勘で育てたキュウリは「他とは違う。これだけは自信を持って言える」。

 パリッとした食感の浅漬けもいいが、生のまま味わうのが一番だという。星さんは「生産者の高齢化で流通が少なく、物価高もあるが、健康のためにもおいしい野菜を食べてほしい」と願う。(漢人薫平)

<メモ>
 キュウリにはカリウムが含まれ、むくみやだるさの改善に効果があるとされる。「まりん」はいしのまき農協管内の農家47軒で栽培されている。星さん宅では、薄くスライスして白だし・酢と一緒に袋に入れてもみ、10~20分置いたらすりごまをかけて食べている。

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