枯れ山水、牡鹿半島描く 震災で被災の洞福寺、檀家の庭石使用し鎮魂願う 石巻
東日本大震災で被災した石巻市谷川浜の洞福寺で、牡鹿半島付近の地形を模した枯れ山水の庭を公開している。檀家(だんか)や被災者らの癒やしの場にしたいと、石田信孝(しんこう)住職(75)が手がけた。
庭は震災前に庫裏があった場所に作った。ハート形にかたどられており、日本古来の魔よけを意味する模様「猪目(いのめ)」を表現しているという。庭の中心に長方形の石を置き、牡鹿半島を表現した。
砂利の水面は海の広大さを感じさせる。牡鹿半島の周りに置かれた三つの石は、金華山など近隣の離島を表す。クジラの尾の形をした石は、同市谷川浜の木組大工小形圭一さん(70)が作り、海に住む生命の力強さを示した。
庭の周りには白やピンク色のツツジとサツキの低木約10本のほか、シダレヤナギも8本植えた。石田さんは「砂利は供養の意味を込めて、亡くなった複数の檀家さんの庭石を集めて使った」と説明する。
震災時、石田さんは事務職として勤務先の東北福祉大にいた。牡鹿半島の自宅に戻ることができたのは震災発生から1週間後だった。「まさかこんなに水が来るとは。寺や家も、何もなかった」と振り返る。
洞福寺は震災で庫裏と本堂が流失。2014年に本堂付近に寺を再建した。庫裏があった土地は雑草が生い茂った。復興作業を進める中で、石田さんは意味のある場所にしようと枯れ山水の庭作りを決意。独学で昨年3月から作業を進め、同6月に完成させた。
石田さんは「禅宗の寺として、癒やしの場を提供したい。地元を縮小して見ることができるようにしたので、郷土愛について考えるきっかけになるとうれしい」と話した。
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