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コロナ5類移行1年、石巻地方のいま(3) 観光 訪日客誘致の遅れ、明確

5類移行後初の大型連休で、多くの観光客でにぎわった潮騒まつり=5月3日
来館者に施設内をガイドするハルバーシュタット館長(中央)=門脇小提供

 大型連休の5月3日、石巻市北上地区に隣接する南三陸町戸倉の神割崎キャンプ場駐車場で開かれた「潮騒まつり」は、午前中から大勢の観光客が詰めかけた。「これまでにないほどの人出だ」。主催者の顔がほころんだ。

■にぎわいは戻る

 新型コロナウイルスの5類移行から1年余り。石巻地方の観光地は以前のにぎわいを取り戻しつつある。

 同市中瀬の石ノ森萬画館の23年の来場者数は約15万5000人で、前年を17.4%上回った。同市小船越の道の駅「上品の郷」も23年は約86万3000人で、前年比33.3%増。コロナ禍前の19年の約91万1000人に迫った。

 ただ、大都市圏や主要観光地は観光客の急回復で過熱し、ごみや交通混雑など住民生活に影響が出るオーバーツーリズム(観光公害)が課題になるほどだ。石巻地方にその熱は波及していない。背景にあるのはインバウンド(訪日客)誘致の遅れだ。

 一般社団法人石巻圏観光推進機構の後藤宗徳代表理事(65)は訪日客に関して「コロナ禍が明けて少しずつ増えてきたが、全体の中では圧倒的に少ない」と現状を語る。

 昨年1年間に石巻地方に宿泊した訪日客は、肌感覚で3000~4000人。日帰り客はその倍ほどだという。後藤代表理事は「写真映えするスポットやアクティビティなど、観光の目玉になるコースづくりが必要だ。地域全体で一歩ずつ前進したい」と展望する。

■震災教訓、世界へ

 地域への訪日客獲得に向けたヒントが垣間見える施設がある。石巻市の東日本大震災遺構「門脇小」だ。

 海外からのツアーに組み込まれるケースが増えている。米国や英国、オーストラリアの旅行者が中心。ツアーの訪問は昨年は2件だったが、今年は5月末時点で2件あり、年内はさらに3件の予約が入っている。5月22日には団体と個人の計12人が施設内を巡った。

 多言語対応のタブレットなどで受け入れ態勢を整えるほか、英国出身のリチャード・ハルバーシュタット館長(58)のガイドも外国客を引き付ける。

 震災の教訓は世界に通じる。ハルバーシュタット館長は「津波は海外でも起こりうる。来訪者は震災の教訓を自国での防災に生かそうと学びに来ている」と強調。「ここは外国人観光客にとっても特別な場所だ」
(渋谷和香)

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