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ブルーインパルス搭乗記(20) 整備士の力〔1〕 高い支援能力 ねじ1本も厳しく点検

松島基地帰還のため、整備されるブルーインパルスの機体(静岡県の写真愛好家・鈴木智子さん撮影)

【元航空機整備士・添田潤】

 今日から4回、搭乗記のスピンオフとしてブルーインパルスの整備について紹介します。

■所属基地が推薦

 ブルーインパルスとは航空自衛隊に所属するアクロバット飛行チームの愛称で第4航空団飛行群に所属し、正式には第11飛行隊といいます。ブルーインパルスの整備士として配属されるには、航空自衛隊のジェット機整備士の資格を取る必要があります。その後全国各部隊で整備士としての技術を身に付け、基準の技量に達した証明を受けることにより、ブルーインパルスへの配属の希望を出すことができます。

 強く、熱く希望したからといって優先度が上がるわけではありません。整備士としての技量、人間としての協調性などを加味した上で、希望する隊員が配属されている基地でブルーインパルスの整備士として推薦してもらわなければなりません。

■年5人程度配属

 希望する隊員全員を推薦するわけにはいかないため、当然ふるいにかけられ、各基地1~2人のリストが航空自衛隊航空幕僚監部に集められます。厳正に審査され、1年に5人程度がブルーインパルスに配属されます。

 ブルーインパルスに配属されたからといって、定年まで勤務できるわけではなく一般の整備士で3年、チーフクラスの整備士で5年と任期が決められています。任期満了後は原則として松島基地には残らず全国の基地に配属されブルーインパルスに配属された経験を基に部隊の技術と士気の向上に努めることになっています。

 ブルーインパルスは毎日飛行訓練をし、全国の航空祭を回り、展示飛行を行いますが、全て第11飛行隊で完結しているわけではありません。松島基地の全部隊の支援を受けて成り立っています。

 東京五輪聖火到着のセレモニーの事前練習で本来は6機なのに、11機のブルーインパルスが飛行したことがあります。この時は五輪という世界的セレモニーを受けて日本の国力を懸けて、一時的に準備したものです。中には全国のブルーインパルスが集まったと思った人もいらっしゃるようです。

■不眠不休作業も

 普段は展示飛行をするギリギリの機数しかなく、機体にかかる負荷も大きいため、MTBF(平均故障間隔)が短い傾向にありますが、MTTR(平均復旧時間)も極端に短いのです。

 これは松島基地の持つ整備支援能力の高さにほかなりません。展示飛行直前に故障した機体は松島基地の総力をかけて復旧に当たります。復旧に必要な部品が青森県三沢基地にある場合、松島基地の輸送担当部隊が躊躇(ちゅうちょ)なく夜通しで取りに行き、整備担当部隊に引き渡すなど不眠不休で作業することもあります。もちろん安全を鑑み、交代制を用いて安全確実に作業を進めます。

 よく「ねじ1本でも」という比喩が使われますが、ねじ1本の締め忘れなどというものではなく、ねじ1本の締め付け、トルクが規定の範囲でないと、飛行特性と耐久性に影響が出ます。そのため工程ごとに検査員の厳しいチェックが入ります。

東京五輪に向けて特別編成され、東松島市上空を飛行するブルーインパルスの多数機編隊(静岡県の写真愛好家・鈴木智子さん撮影)

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