コロナ5類移行1年、石巻地方のいま(4・完) 教育 端末使い、個別指導充実
児童の熱心な視線は黒板ではなく、手元のタブレット端末に注がれている。「メダカのたまごが成長するための養分はどこにある?」。画面に写真やカラフルなデザインを配した4択問題が表示されると、選択肢を素早くタッチしていく。正解が示され「やった!」「間違えた」などと声が上がった。
■学びやすさ向上
石巻市山下小(児童165人)は主に4~6年の理科や社会科、総合的な学習の時間で、クイズ作成サイト「Kahoot!(カフート)」を活用する。授業で学んだ内容を楽しく復習できるよう、端末を使って工夫を凝らす。
文部科学省は2019年度、デジタル端末を全国の小中学生に配備する「GIGAスクール構想」を掲げた。新型コロナウイルス禍の一斉休校などで石巻地方の学校も対応を加速させ、21年度までに小中学生1人1台の配備が実現した。
山下小は端末専用のドリルを使った「自由進度学習」も展開する。授業の後半や家庭学習で、児童がそれぞれの進度に合わせてドリルに取り組む。教員は全員の正答率や平均点、勉強時間などを細かく把握する。従来の紙の問題用紙を使うのに比べ、児童一人一人へのサポートが充実した。
6年生の担任で研究主任の須田佑介教諭(40)は「児童が自身の習熟度を自分で確認し、学習方法を考えることができる。学びやすさを高めるためにタブレットは有用だ」と話す。
■教員の負担感増
端末を活用したオンライン授業の導入も進む。東松島市矢本西小(児童294人)は、教室で指導する教員の姿や板書の内容を児童の端末に配信し、自宅でもリアルタイムに授業を受けられる仕組みを整えた。児童や家族がコロナなどに感染して自宅待機する際、希望する家庭が利用する。
デジタル環境の整備で児童の個別支援は充実した。一方で、教員側の負担感が増した側面もある。
同校で情報教育を担当する大橋康弘教諭(54)は「オンライン授業の希望があると、端末の準備などに時間が取られることもある」と吐露。教員ごとに理解度の差もあり、有効活用のためには支援が欠かせない。「デジタルに不慣れな職場をサポートするため、講習などの制度がさらに必要だ」と訴えた。
(漢人薫平)
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