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社会的孤立、地域の理解を 交流スペース開設1年、東松島市社協運営 安心できる場に

笑いが絶えず、利用者の心が安らぐ場となっている池の内ベース

 障害や引きこもりなど、社会から孤立しがちな人と地域とのつながりを築こうと、東松島市社会福祉協議会は同市小松で交流スペース「池の内ベース」を運営している。開設1年が過ぎ、「安心できる場」を理念に支援から取りこぼされる市民のための居場所づくりに一層励んでいる。(西舘国絵)


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 ベースは昨年6月に開設した。善意の市民から家屋の一室を借り、月2回活動する。歌や踊りといった特別な催しはない。お茶を飲んで話したり、畑仕事をしたりして、参加者同士でのんびり交流している。

 開設1年を機に取材した日は、市社協職員を含む20~70代の7人が、畑で取れたジャガイモを揚げていた。大手ファストフード店の味を目指し和気あいあいに活動。「さっき揚げたのよりおいしい」「自分が小学生の頃はクラスが七つあって…」と、他愛のない会話が続く。

 ベースではうつ病や未就労など、異なる不安を抱えて孤立した市民が、気取ることなく交流する。輪の中心にいるのは担当者の市くらし安心サポートセンター浅野恵美さん。「要支援者を支援される側のままにしない。ここでは互いに補い合うことで、みんなが対等でいられる」と特長を語る。

 これまでの支援活動で「きょういく」と「きょうよう」を尊重してきた。今日、行く場所と用事があることが、社会の一員である実感を生み、新たな一歩を踏み出す気力になるという考え方だ。

 ベースをきっかけに、参加者は乱れていた生活リズムを立て直したり、就労に踏み出したりと、社会とのつながりを少しずつ育んでいる。同市小野から自転車で通う男性(71)は「1人暮らしだと話す相手がいないから」とありがたみを語った。

 浅野さんは「社会的孤立は周囲の無関心も要因。孤立した人がやり直し、挑戦できる場所が増えて、地域の理解も深まってほしい」と語った。

 ベースは第2、4火曜日の午前10時~午後1時開館。参加無料。見学を随時受け付ける。連絡先はサポートセンター0225(98) 6925、メールは rainbow@hmlife.jp

開設1周年記念しトークイベント

闘病経験や地域の在り方を語り合った1周年イベント

 池の内ベースの開設1周年を記念したイベントが同所であった。利用者の東松島市小野の藤原洋さん(38)と同市の男性(33)が、身体、精神障害者としての自身の経験や社会福祉を語った。県内の福祉関係者ら約20人が参加した。

 藤原さんは目のがんで21歳で全盲になった。イベントでは、目の不自由な人のために白杖(はくじょう)などの役割を知り、点字ブロックを避けて歩くなど少しずつの行動が障害者の暮らしやすさにつながると訴えた。また「『障害者との接し方が分からない』が健常者の感覚だと思うが、私たちは話せるし頼ってもらうこともできる。いろんな障害者と関わり理解を深めてほしい」と語りかけた。

 うつ病や強迫性障害を抱える男性は、藤原さんと市内の同じ就労継続支援B型事業所に通う。昨年12月にベースを利用し始め、現在は市社協の事業にボランティア参加することもある。

 トークでは周囲に病気を理解されず傷ついた経験を話し「知人に『うつは病気じゃない』と言われて悲しかった。抱える苦しみを知り、気持ちを和らげる手助けをしてほしい」と、精神障害への理解を求めた。

 記念イベントは7月9日に開かれた。

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