子育てと介護の縁側・今日も泣き笑い(7) ご近所のチカラ 助け合いの輪が命綱に
【石巻市・柴田礼華】
7月の3連休の日曜日、われわれ夫婦と娘2人は仕事の関係で仙台にいました。夕方4時半ごろ用事が済み、夫の運転で石巻に向かい始めた時、夫の携帯が鳴りました。
発信者は義父。嫌な予感がした夫が電話に出ると「レツさんがいなくなった」と焦り声。15分ほど前、義母が「トイレに行く」と寝室を出たきり帰って来ないというのです。
■義母の姿見えず
聞くと、寝室からトイレまではすぐだし大丈夫だろうと、テレビで相撲を見ていたものの、いつまでたっても戻って来ない。心配になりトイレを見に行ったところ、義母の姿はなく、全ての部屋と中庭、玄関周りを探しても見当たらず、玄関に靴は残っているとのこと。
ほとんど目が見えず、認知症で住所や電話番号も言えない義母。そんなに遠くまで行くはずはないけれど、自宅前はそこそこ交通量もある道路。交通事故に遭ったり、転倒して動けなくなったりしていたら…。捜す側の義父も足元が危ういので転んでしまうかも…。想像すると気が気ではありません。
どんなに急いでも私たちは自宅まで1時間はかかるし、おまけに雨も降りだしそう。夫の姉たちも入っている通信アプリLINE(ライン)の家族グループラインに状況を共有し、警察に連絡しようか迷いましたが、ふとお向かいのSさんの顔が思い浮かびました。
わが家と同じく3世代で同居されているSさんご家族。先日Sさんのおばあさんがわが家に野菜を届けてくれた時、「お宅は小さい子もお年寄りもいて大変なんだから、困った事があれば遠慮しないで声を掛けてね」と言ってくれたことを思い出しました。思い切ってSさん宅に電話をかけ、状況を説明し、義父と一緒に捜すのを手伝ってほしいとお伝えしました。
念のため、自宅近くの蛇田交番に電話をかけているさなか、Sさんから元気な義母を見つけたと連絡が来ました。私がヘルプの要請をした後すぐ、Sさんご夫妻がわが家に来て義父と捜してくれ、お隣さんの敷地に靴下のままたたずんでいる義母を発見してくれたそうです。心の底から感謝でした。
■交流は日頃から
わが家は東日本大地震で被災後、内陸の集団移転団地に転居しました。Sさんご家族は震災前からのご近所さんで、移転後も義両親はSさんが営む床屋さんに通ったり、お土産のやりとりをしたり、日頃から良いお付き合いをさせていただいていました。
おととし、3歳だった長女がプリンセスにはまり、親が止めるのも聞かず毎日ドレスを着て生活していたころ、秋になってもノースリーブで寒そうに散歩している姿を見て気の毒がったSさんご家族から「風邪ひくから着せてあげて」とお孫さんのお下がりのかわいい長袖ワンピースをもらったりもしました。お互いの家族構成や状況を把握しているので、すぐに状況を察してくださったようです。
恐らく警察より消防より早く義母をレスキューしてくれたであろうご近所助け合いネットワークの力。ご近所付き合いは面倒くさいことも多いかもしれませんが、わが家にとっては不可欠なライフラインの一つです。
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