閉じる

コメ品薄、石巻地方でも 一部店舗は購入制限 新米間近、混乱少なく

県産ひとめぼれ完売の紙が貼られたウジエスーパー石巻山下店=27日午後4時ごろ
収穫を控え、黄金色に色づいた田んぼの稲穂=28日、石巻市鹿又

 石巻地方でコメの品薄が深刻になっている。一部の店では商品棚から精米がなくなり、購入制限をする小売店もある。新米の収穫が始まれば、落ち着くとの見方があり、大きな混乱は起きていないが、食品の価格高騰にさらされる消費者は困惑している。(浜尾幸朗、西舘国絵、相沢春花、渋谷和香)

■小売店

 「コメ不足で商品棚が空になるのは記憶がない。各店から100オーダーがあっても半分しか納品できない。在庫が逼迫(ひっぱく)している」

 石巻市内にも店舗を構えるウジエスーパー(本部登米市)の担当バイヤーは悲鳴を上げる。

 石巻山下店(石巻市西山町)では27日に入荷した県産ひとめぼれ5キロ(20袋)が午前中で完売した。同店によると「(コメが)あればあるほど売れる」といった状況だ。今、商品棚には2キロ詰めとパックご飯などを並べている。

 コメの入荷が芳しくなくなった7月中旬ごろから全31店で「1家族2袋まで」と購入を制限している。

 品薄の背景には、昨夏の記録的な猛暑などで県外の産地で作柄が振るわなかったことなどがあるようだ。2023年産米の作況指数は宮城は105の「やや良」だったものの、新潟と秋田は、それぞれ95、97と「やや不良」だった。

 円安を背景にしたインバウンド(訪日客)の増加も、コメの需要増を後押ししたとみられる。

 新米の入荷時期について、本部の担当バイヤーは「9月7、8日に入荷予定だが、台風の影響でずれ込むことも予想される。9月中には何とか安定供給したい」と話している。

■生産者

 ササニシキとひとめぼれを計2ヘクタールで生産する石巻市内の農家男性(36)は、コメの品薄で困った知人から「コメが余っていないか」と尋ねられた。「備蓄米が放出されないから、都市部を中心にコメ不足になっているのではないか」と推測する。

 県石巻農業改良普及センターによると、管内の刈り取り適期は9月上旬の見込み。担当者は「刈り取りが始まればコメ不足も落ち着くのではないか」と見るが、心配するのは東北に近づく台風10号の進路だ。

 農家男性は「稲穂が倒れるかもしれない」と懸念する。東北を直撃しなくても、ほかの米どころが打撃を受ければ、十分な流通量を確保できるか分からない。

 昨年は猛暑の影響で米粒が白く濁ったり、亀裂が入って割れやすくなったりした。県内米の1等米比率は82.9%と9割を下回った。今年も出穂後に暑さが続き、1等米の割合が下がる不安がある。

■消費者

 コメを入手するために小売店を何軒も回る人もいる。石巻市内の無職70代女性は、今月に入ってから市内のスーパーなどを訪ね歩いたが、商品棚にお目当ての県産米が見つからず、初めて福島県産米を購入した。

 「コメ不足について報道で知ってはいたけれど、石巻にコメがないなんて驚いた」と話す。購入したコメは通常買うコメより200、300円高かったという。

 窮余の策だがコメは生活に欠かせない。「来月も高くても買わなくてはならない。病院代などもかさむ年金生活では日々が苦しい」。コメ不足、食料費の価格高騰に年金の支給額の減少が生活苦に拍車をかけている。

■飲食店

 現時点で石巻地方の契約農家から仕入れる飲食店に大きな影響はなさそうだ。

 市内の飲食店も同市の契約農家からコメを直接購入し、影響はない。経営者の男性は品薄状況を心配するものの「来月になれば新米が入ってくる」と冷静に受け止める。別の市内の飲食店も市内の契約農家から米を仕入れており、営業に問題はないという。

関連リンク

関連タグ

最新写真特集

石巻かほく メディア猫の目

「石巻かほく」は三陸河北新報社が石巻地方で発行する日刊紙です。古くから私たちの暮らしに寄り添ってきた猫のように愛らしく、高すぎず低すぎない目線を大切にします。

三陸河北新報社の会社概要や広告などについては、こちらのサイトをご覧ください ≫

ライブカメラ