子育てと介護の縁側・今日も泣き笑い(10) 多世代共生型道場 みんなに役割と活躍を
【石巻市・柴田礼華】
剣道教士7段、国士舘大剣道部出身で元体育教師の夫の父、柴田滋が館長をしている剣道道場「護国館」。ともに剣道5段のわれわれ夫婦も指導に携わらせてもらい、週2回は夫の母(初段)、4歳と1歳の娘たちを含む家族6人で道場に通っています。
2020年に設立50周年を迎えましたが、新型コロナウイルスまん延のため記念の集いなどを行うことはかなわず、今年1月に親の会の皆さんが50周年を祝う会を企画してくれました。
さてこの道場、どのような成り立ちかというと、1973年、義父の父で職業軍人だった柴田良蔵が、高度経済成長のさなか、子どもたちが暇を持て余して不良になるぐらいなら剣道をしにいらっしゃいというスタンスで始まったのだそうです。
■剣道通じて学ぶ
道場のモットーは「きれいに負けろ」。夫に聞いた話では試合に勝つテクニックなんかは一切習わないから、他の道場のいいカモだったそう。
それでも道場出身者の中には剣道を長く続けている人も多く、高段者になっている人もいて「きれいに負けろ」という言葉には、目先の勝ちよりも、人として真っすぐに、よりよい生き方を剣道を通じて学んでほしいという願いが込められていたのではないかと勝手に解釈しております。
おそらく石巻で現存する道場の中で一番古い歴史を持つであろう護国館。現在、なかなかユニークな場になっております。
まず注目すべきは年齢層。下は1歳から、上は87歳の義母まで、老若男女が毎週2回、火曜日は石巻市二俣小体育館、金曜日は石巻市総合体育館に集います。ちなみに義母は60歳で看護師を定年退職した際、自分の健康管理のために剣道を始めたそうです。送迎もあるし、道具もあるから一番手間のかからない習い事だと考えたそう。超合理的な思考です。
わが家の他にも3世代で稽古にいらっしゃるご家族がいたり、子どものころ道場に通っていた方が親になって子どもと一緒に来てくれたり。東日本大震災や新型コロナの流行など幾度となく存続の危機もありましたが、なんとなく緩やかに人が集まり、いまだに存続しています。
■家族を見守る輪
私にとっては1歳と4歳の娘も、目がほとんど見えなくなっている義母も連れて行ける貴重な場所。中学生の女の子が義母の手を引いて体育館の廊下を歩いてくれて、私たち夫婦が指導する間、生徒の保護者さんたちが2人の娘の子守をしてくれて、道場にいるみんなが柴田ファミリーを温かく見守ってくれているのを感じます。
何度も入院し、体調を崩してきた義父が「館長」「滋先生」としてやりがいと生きがいを持てる場でもあります。実際に滋先生がいると、道場の雰囲気が引き締まり、指導者に指導をしてくれるので、稽古の幅が広がります。
夕方、幼児や足元が不安定なシニアを連れての外出はすごく大変ですし、めちゃくちゃ疲れるのですが、わが家にとってはそれ以上の価値があると思います。
試合にはたまにしか出ませんし、勝つための指導もあまりしませんが、いる人みんなが役割を持ち、活躍できるヘンテコな道場。それが護国館です。
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