閉じる

防潮堤壁画「海岸線の美術館」、制作加速 13日に5、6作目披露 石巻・雄勝

 石巻市雄勝地区の防潮堤に巨大壁画群を作る「海岸線の美術館」プロジェクトの制作作業が加速している。13日のイベントで5、6作目をお披露目し、8作目まで今月内に完成予定。新たに4人のアーティストも加わり、12作目までの制作ビジョンをまとめるなど、防潮堤全体をアートスポットとする構想が着々と進む。

6作目となる「大首絵」の制作現場。県道沿いに四つの壁画が並ぶ

 プロジェクトは、同市の一般社団法人「SEAWALL CLUB」が取り組む。5作目の「岩戸開」は上雄勝2丁目に制作され、これまで4作すべてを担当した都内の芸術家安井鷹之介さん(30)が約1週間かけて仕上げた。

 地元の伝統芸能で、国の重要無形民俗文化財「雄勝法印神楽」の演目「岩戸開き」をテーマに、天照大神(あまてらすおおみかみ)が洞窟から登場する迫力の一幕を色鮮やかに表現した。

 安井さんは「これまでの壁画では風景との調和を目指してきた。今回は住民の方にアイデアをもらい、灰色の閉鎖的な防潮堤をオープンにするイメージで描いた」と話した。6作目も担当する。雄勝法印神楽に登場する神々を4連作の壁画「大首絵」で表現。同町大浜で作業を進めている。

 7作目は「ツール・ド・東北」とコラボし、新たに参加する都内の現代芸術家岩村寛人さん(38)ら4人のアーティストが担当する。防潮堤の先に広がる海中の世界をテーマに、2匹の人魚の姿をポップな画風で描く計画。

 岩村さんは、東日本大震災の津波漂流物により音が出なくなった鳴り砂をテーマにした8作目も手がける予定。「鳴り砂の可能性をあらためて絵に起こし、市民と共有できる作品にしたい」と意気込む。

 7、8作目はともに10月末の完成を目指す。同法人では、来春以降に取り組む12作目までのビジョンもあり、防潮堤にさらなる彩りが加わりそうだ。

 13日のイベント「Ogatsu Seaside Fes」は、同法人が上雄勝2丁目の壁画前で開く。芋煮の振る舞い、雄勝法印神楽の奉納、名取市出身のシンガー・ソングライター中村マサトシさんらがライブを行うほか、キッチンカーなど約25店が出店する。午前10時~午後5時。来場無料。

 12作目までの壁画制作費や運営費金を募るクラウドファンディング(CF)にも取り組んでいる。CFサイト「レディーフォー」で31日まで受け付ける。問い合わせは同法人090(5419)6783。

プロジェクト5作目「岩戸開」。木々の緑色や防潮堤の灰色とのコントラストが鮮やかだ
海が見えない海岸線、災害大国日本の新しい未来をつくる美術館「海岸線の美術館」 - クラウドファンディング READYFOR

関連リンク

石巻かほく メディア猫の目

「石巻かほく」は三陸河北新報社が石巻地方で発行する日刊紙です。古くから私たちの暮らしに寄り添ってきた猫のように愛らしく、高すぎず低すぎない目線を大切にします。

三陸河北新報社の会社概要や広告などについては、こちらのサイトをご覧ください ≫

ライブカメラ