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女川原発・重大事故発生時の広域避難計画 実効性、担保見えず 住民から不安の声

 東北電力女川原発2号機(女川町、石巻市)が29日、再稼働した。再稼働を巡っては、重大事故発生時の広域避難計画〔※〕の実効性を否定する声が根強い。原発30キロ圏の住民約18万8000人が県内31市町村に逃れる計画だが、複合災害による避難道の寸断や渋滞の発生、屋内退避が徹底されるかなど懸念は多い。計画に不備があるとして石巻市の住民が再稼働差し止めを求めた訴訟も続いている。

前年度の原子力防災訓練で、避難車両の放射線量を調べる検査員。広域避難計画を巡っては、渋滞発生などに対する住民の不安が消えていない=1月20日、登米市登米総合体育館

 計画の実効性は策定当初から疑問視された。再稼働の前提となる「地元同意」手続きの一環で2020年に開かれた住民説明会でも住民の不安の声が噴出した。

 国や県は「不断の改善」に取り組むと説明する。昨年12月には策定後2回目の改定を行い、石巻市の牡鹿半島から船で避難する場合の経路の多重化や避難支援アプリの導入など4項目を追加した。

 ただ、東日本大震災の被害を考えれば、津波発生時は海路での避難そのものが難しい。県が昨年9月に運用を始めたアプリは住民のスマートフォンに避難先を直接通知して迅速な行動を促すが、登録者は現状、対象住民の約4割にとどまる。スマホに不慣れな高齢者の利用や災害時の通信環境にも課題がある。

 能登半島地震では北陸電力志賀原発(石川県志賀町)の立地地域が被災した。原発事故時の避難道が寸断され、複合災害時の避難計画の実効性のもろさが改めて浮き彫りになった。住宅被害も広がり、屋内退避の妥当性も問われている。

 女川原発30キロ圏の各市町も計画の改善に取り組む。石巻市の避難計画は、行政区ごとに避難先を県内27市町村に振り分ける。昨年10月に一部を改定し、より迅速な避難につなげようと市町村区単位だった避難先を具体的な施設306カ所に明確化した。

 一方で、受け入れ側自治体との協議や訓練は進んでいない。市危機対策課の担当者は「避難先の自治体が多いため、訓練をできていない相手が多い。個別に計画を説明し、持ち回りで訓練を実施していく必要がある」と話す。

 避難計画を巡っては石巻市民17人が21年5月、県と石巻市の計画が実効性を欠くとして、東北電に再稼働差し止めを求める訴えを仙台地裁に起こした。昨年5月の一審判決は実効性の判断に踏み込まなかったが、控訴審では仙台高裁が実効性の有無を審理する考えを示しており、11月27日の高裁判決が注目される。

 原告団長の原伸雄さん(82)は「避難計画は机上の空論でしかなく、事故が起きれば多くの住民が被ばくする。裁判所の良識ある判断で再稼働を止めてほしい」と語った。

〔※〕女川原発の広域避難計画:女川原発から30キロ圏内の住民が自家用車やバスなどで県内31市町村に段階的に避難する。5キロ圏の予防的防護措置区域(PAZ)と、牡鹿半島南部と離島の準PAZは即時避難。5~30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)は屋内退避し、放射線量に応じて逃げる。30キロ圏の女川町、石巻市、東松島市、登米市、涌谷町、美里町、南三陸町の7市町が2017年3月までに策定。内閣府や県などでつくる「女川地域原子力防災協議会」が取りまとめ、20年6月に政府の原子力防災会議で了承された。

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