学生の力を震災伝承に 「経験ない世代にも」 石巻・伝承館解説員、新たに2人
石巻市のみやぎ東日本大震災津波伝承館で10月、東北工大3年武山拓睦(たくみ)さん(20)=石巻市中央=、仙台市東仙台中1年阿部実奈さん(13)がボランティア解説員に認定され、震災伝承の一歩を踏み出した。武山さんは石巻出身者では初めての認定で、小学生時代に被災した経験を生かす。阿部さんは中学生で初の解説員となる。ともに、災害に備える重要性を伝える決意を新たにしている。
武山さんは石巻市渡波地区出身。震災時は渡波小の1年生だった。学校で激しい揺れに襲われ、同市鹿妻地区にある祖母の家に避難したが、津波はそこにも押し寄せ、階段の中ほどまで浸水した。「学校に残った友人は…」。あきらめの気持ちがよぎったことを鮮明に覚えている。
被災経験をきっかけに防災に関心を持ち、大学のゼミでは地域防災について学習。伝承施設の利用者層などを調べる研究の延長で解説員を志した。「解説員の研修では、これまで知らなかった津波の高さや他地域の被害などのデータを知ることができた。学びを生かし、震災の実態を伝えられるようにしたい」と力を込める。
阿部さんは小学校の校外学習で仙台市内の震災遺構を訪れ、伝承活動に関心を持った。県内の震災伝承施設を巡る中で高校生のガイドに出会い「自分も伝える活動をやってみたい」と解説員に応募した。今後は学校の長期休みを活用するなど、毎月1回ほどのペースで活動する予定。
伝承館で10月26日に認定式があり、東北大災害科学国際研究所の佐藤翔輔准教授が2人に認定書と記念バッジを手渡した。
武山さんは「震災について学びを続けながら、次に起こる災害への備えにつながるような解説をしたい」、阿部さんは「自分のように震災を経験していない子どもが増えていく。震災がどんなものだったのか同世代に知ってもらえるようにしたい」とそれぞれ抱負を語った。
ボランティア解説員は小中高生、大学生、専門学校生が対象で、県と同研究所が募集している。2人の認定でボランティア解説員は計6人になった。
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