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仕事、人に合わせ創る コミュニティスペースうみねこ・八木代表 石巻に総菜店など展開

 女川町で仕事の創出を通じ、東日本大震災の被災者支援や地域振興を図ってきた女性が石巻市内で総菜店を営み、女性や子どもが活躍する場としてにぎわい出した。女性は「人ありき」を掲げ、「仕事に合わせて人が働くのではなく、人に合わせて仕事を創る」との経営哲学を貫く。
(西舘国絵)

従業員と談笑する八木さん(右)

 この女性は同町の一般社団法人コミュニティスペースうみねこ代表理事の八木純子さん(60)。イチジク栽培、布草履作り、サンマ型のたい焼きプロデュース…。2013年に設立した法人は、多様な仕事を展開してきた。

 22年に開店した石巻市新栄2丁目「ぐるめ処はんじろう」は、酢豚や筑前煮などの総菜を数百円で販売する。従業員は子育て世代を含む女性4人。勤務形態はフルタイムや2時間の短時間など人それぞれだ。

 開店のきっかけは新型コロナウイルス禍。収入減など非正規雇用が多い女性への影響は顕著だった。女性は平時も子育てや介護など、家庭の事情で十分に働きがたい。「女性が生活に合わせて働ける職場」を目指し、開店した。

 常に多くの従業員が要る飲食店は、急な早退や欠勤が現場の負担になる。仕込みの時だけ人数が集まれば、後は1人でも店を回せる総菜店に決めた。

 従業員の古牧司さん(42)は「子どもを優先できる職場。同僚にはむしろ『参観日には学校に行け』と言われる」と笑って話した。

 八木さんは「総菜は人を生かすアイテムに過ぎない」と自身の視点を説明する。「商品を中心に仕事を創ると(合わせて働けない)人を取りこぼす。女性や高齢者など、働き手のできることを軸に仕事が作れると示したい」と話す。

 店を拠点に、子どもの力を生かすユニークな活動も始めた。

 不定期で開催する「子供たちが作る食堂」は、子ども自身が料理を作って振る舞う。大人は見守るだけで、メニュー決めから調理、配膳、片付けまで、全てを児童が担う。根底にあるのは、子どもの孤食や貧困を防ぐのに彼らが「お客さん」である必要はない、という考え方だ。

 9月に一度開いた食堂は稲井小の6年生3人が切り盛りした。約20人が来客。児童は朝9時に集合し、米を炊き、タマネギやキャベツを切ってカレーとコールスローを振る舞った。

 客を見送った橋本陽菜乃さん(11)、松本咲花さん(12)は「楽しかった。またすぐやりたい」と笑顔で話した。充実感が自信につながった。

 八木さんは「人を元気にするには、その存在に意義や役割があることが大事。店という場所を生かし、人が主人公になれる仕組みを作っていく」と語る。

 店は高齢者らに安価な夕飯を提供する食堂の営業も検討している。

子どもたちが手作りの料理を振る舞った「子供たちが作る食堂」

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