石巻こけし、山田監督へ 男はつらいよ「寅さん」モデル、制作 仏記者が依頼
映画「男はつらいよ」などを生み出した山田洋次監督(93)に、主人公の寅次郎(寅さん)をモデルにした「石巻こけし」を贈った人がいる。山田監督の評伝を手がけたフランス人ジャーナリストのクロード・ルブランさん(60)。石巻市には東日本大震災前から足を運び、復興の歩みも母国に伝えるなど縁が深く、現在は同市ゆかりの漫画家、故石ノ森章太郎さんの評伝執筆にも取り組む。(漢人薫平)
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ルブランさんはフランスの日本情報誌「ズーム・ジャポン」の創刊編集長。山田監督とは評伝の取材を機に約10年前から交流がある。監督が好む国内の工芸品のプレゼントを続けており、今年は石巻こけしの作家林貴俊さん(50)に制作を依頼した。
「寅さんをモデルにしてほしい」との要望を基に、林さんが作ったこけしは3種類。「いねむり寅ちゃん」と名付けた作品は、農作業中に赤ん坊を入れておく「えじこ」の中でかわいらしく眠る子ども時代の寅さんをイメージした。
ルブランさんは「林さんはまさに『匠(たくみ)』。リクエストから私の心をよく理解し、形にしてくれた」と感激した。
樹齢の長さから長寿の縁起物とされる屋久杉を使ったこけしと、映画用のカメラと山田監督を模した作品も加え、5月に手渡した。ルブランさんは「監督は子どものように笑っていた。本当にうれしそうだった」と振り返った。
ルブランさんと山田作品の出合いは40年前。日本の映画館で寅さんシリーズ34作目「寅次郎真実一路」を見た。人情味あふれる登場人物や、世相と鏡映しの世界観に引き込まれた。約800ページに及ぶ評伝「山田洋次が見てきた日本」を3年前にフランスで出版。今年9月に日本語版も発売した。
男はつらいよのロケ地巡りがライフワークで、来日する度に友人がいる石巻にも必ず足を運んだ。震災後は自身の日本情報誌で特集を企画。被災地の状況を発信してきた。
石巻にあった昔ながらの街並みは復興と共に失われつつあると感じる。山田作品の風景と重ねていたルブランさんはそれを惜しむ一方、震災前から街中にたたずむ石ノ森作品のキャラクター像は特別な思いで見つめる。
フランスで広く浸透する漫画文化の源流を伝えようと、石ノ森さんの評伝執筆を決めた。タイトルは「石ノ森章太郎、むかしはマンガ王」。作品と人生を500ページにわたってつづる大作になるという。
「作家の生まれ育った地域を知れば、作品をより深く理解できる。石巻と宮城に敬意を表する機会にもなった」とルブランさん。来年1月の出版に向けて執筆の追い込みをかける。
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