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いしのまき食探見 >プチヴェール 栄養豊富、フリル華やか

青々と茂った葉をかき分け、脇芽のプチヴェールを摘み取る及川さん=6日
加熱すると緑がより鮮やかになるプチヴェール

 海と山とで育まれる豊かな石巻地方の食材。伝わる文化と技を生かした郷土の「食」を紹介する。

プチヴェール

 ケールと芽キャベツをかけ合わせたアブラナ科の野菜・プチヴェール。うたい文句「世界初の非結球芽キャベツ」の通り、芽キャベツでも球状にならず、フリルのように広がる華やかな見た目が特長だ。

 県内では東松島市の農家が2005年、初めて生産に乗りだした。今も石巻圏域で数戸が作付けする。

 このうち同市小松の及川優さん(80)は露地とハウスで計約300株を栽培。背丈80センチほどの太い茎に密集して生える小さな脇芽がプチヴェールで、4~6センチに育ったら収穫どき。今年は、茎が二股に分かれる高温障害が出るなど酷暑に翻弄(ほんろう)されたが、青々とした立派な葉が育った。及川さんは「よく茂ったものだ」と感心する。

 糖度は11~13度で葉物野菜としては高め。癖のない風味で食べやすい。栄養価が高く、鉄やカルシウムも豊富。ゆでると緑がさらに鮮やかになり、シチューなどの彩りに活躍する。

 及川さんは例年、クリスマス時期に合わせて出荷を始める。知名度はまだ高くはないが「気に入る消費者が増えれば、生産農家も増えるかもしれない」。

 苗は7月末ごろ、石巻市恵み野6丁目の園芸店「グリーンサム」などに並び出す。同店では今年、個人と農家に計約1000株を販売した。チャーミングなプチヴェールは家庭菜園でも楽しまれている。
(西舘国絵)

<メモ> 
 プチヴェールはフランス語で「小さな緑」を意味する。静岡県の種苗会社「増田採種場」が1990年に開発し、商品化した。及川さんは今月中旬から、東松島市赤井の石巻青果花き地方卸売市場に出荷し、来年3月ごろまで流通する見込み。

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