2024ニュース回顧 取材ノートから > 石巻市官製談合事件 信頼関係ゆがみ、共犯に
<再発防止、匿名通報導入>
東日本大震災の復興事業をきっかけに深まった信頼関係がゆがみ、共犯関係に形を変えた。
石巻市が発注した下水道工事の入札を巡る官製談合事件。市下水道建設課の元職員2人(ともに懲戒免職)と同市の建設会社「遠藤興業」の元専務執行役員の計3人が逮捕、起訴され、いずれも執行猶予付きの有罪判決が下された。
市の調査や裁判では、3人が2020年ごろから入札情報のやりとりを繰り返していたことが明らかになった。
元職員は「下水道工事が想定通り進まず、休日・昼夜を問わない上司からの連絡、大規模な予算管理・執行の苦痛とプレッシャーがあった。遠藤興業にお願いすればスムーズな冠水対策工事につながると考えた」と動機を明かした。もう1人も「ちゅうちょや後ろめたさはあったが、回数を重ねる度にだんだんと薄れていった」と語った。
市が無記名で実施した職員アンケートでは、入札情報を業者に伝えたことがあると答えた職員が他に4人いたことも発覚した。「(金銭の授受などではなく)業務を確実に遂行するために談合を行ったのであれば、その心理に追い込まれた根本的な原因から再発防止策を考えてほしい」。自由記述では、当事者だけの問題で終わらせず、組織の在り方を問うべきだとの意見があった。
職員の逮捕を受けて市は再発防止に向けた検討委員会をつくり、今月までに再発防止対策をまとめた。情報漏えいや入札不調を防ぐため1000万円以上の建設工事などで暫定的に予定価格を事前公表し、これまで利用実績がなかった公益通報制度は匿名を可能にした。コンプライアンス研修を継続的に実施して職員の意識向上を図り、情報管理の順守に関する定期的なフォローアップに努めるという。
事件発覚後に取材した同業者の中には、多くの工事を受注し「独り勝ち」状態だった遠藤興業に疑いの目を向けていた関係者もいた。一方で、他の同業者は「まさか職員が漏らしていたとは」と驚きを隠さなかった。
「どの社も生き残りを懸けてやっている。少なくとも市は健全で公平であってほしい」。震災の復興需要が収束した中で、業界関係者が憤った言葉が忘れられない。「市民の信頼回復」を掲げる市の取り組みを注視していきたい。(及川智子)
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