2024ニュース回顧 取材ノートから > 令和の米騒動 コメ価格高騰、今もなお
<猛暑引き金、集荷競争も>
全国の小売店からコメが消えたこの夏。ようやく店頭に並んだ2024年産米の価格は高騰したまま、新年を迎えようとしている。「コメ余り」と言われて久しい中、「令和の米騒動」は少しの受給変動で価格が乱高下する恐ろしさを、米どころ石巻地方にも突きつけた。
米価高騰の引き金は、昨夏の猛暑による23年産米の品薄だった。8月には南海トラフ地震臨時情報の発表による買いだめも発生。9月にはようやく店頭に新米が並び、ほっとしたのもつかの間、値札を見てため息をつく買い物客の姿が目立った。
飲食店や弁当店では値上げの動きが広がる。米が主力となる昼営業を休む店も出てきた。飲食店を営む石巻市の60代男性は「店の料理の価格には転嫁しづらいが、従来通りでは経営が成り立たない。自分の食事は麺が増えた」と明かした。
価格高騰は生産コストの上昇に加え、業者間の集荷競争のあおりも受けた。出来秋、石巻地方の農家には見慣れない集荷業者が訪れ、いしのまき農協の概算金を上回る買い取り価格を提示。農協は追加払いを行い、ひとめぼれ1万8700円、ササニシキ1万9000円(ともに前年比6600円増)と「過去に見たことがない上げ幅」(農協の担当者)となった。
生産コストの高騰に苦しんでいた農家にとって米価上昇は一筋の光となった。物価高や国際情勢の影響で、農機や燃油、肥料など生産コストは上昇。同市稲井地区の80代男性生産者は「今年の米価が続くなら息子に継がせられる」と歓迎した。ただ、手放しで喜ぶ農家はなく、一様に消費者のコメ離れや、来年以降の暴落などへの懸念を口にしていた。
実際、大手外食チェーンは、国産より安い外国産米への置き換えを進め、一部スーパーには台湾産米が並ぶ。「国産米が外国産米に置き換わる流れになるのが怖い」。石巻地方の農業関係者は警戒する。
取材先で出会う農家はほとんどが高齢者。農水省によると、県内の平均年齢は68歳(2020年)で、年々上昇。石巻市の農事組合法人の役員男性は「若い世代に就農してもらうには米価上昇は重要」と語る。
おかずとなる食材も軒並み値上がりする中での米価高騰は家計をじりじりと圧迫する。「米は高い」という印象が定着しつつあるが、1膳当たりの米価は40円程度。主食を作り、田園風景を守り続けてきた農家の現状に思いをはせ、地場産米を食べ支える意識を持ち続けたい。(相沢美紀子)
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