2024ニュース回顧 取材ノートから > 東松島市、原発交付金拡大要望 UPZの立場改善狙う
<首長会議廃し協議会に>
「桁が一つ足りないのではないか」。住民の9割が東北電力女川原発(女川町、石巻市)から5~30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)に暮らす東松島市は今年、原発を巡る交付金の拡大を求め、県への要望活動を推し進めた。国の原発回帰の姿勢が鮮明になる中、市はリスクだけを押しつけられてきたUPZの立場の改善を狙う。
同市と登米、涌谷、美里、南三陸のUPZ5市町でつくる首長会議は今年2回、県に要望をぶつけた。8月は再稼働時に県が国から受け取れる交付金の分配を、11月には本年度に5市町への配分が始まった核燃料税交付金の増額を求めた。
要望の背景には、重大事故を想定した避難訓練の実施やイメージの悪影響など、UPZに入ることに伴う自治体の負担増がある。
いずれの要望も県からは事実上のゼロ回答だったが、首長会議は攻めの姿勢を貫く。今月23日、会議を廃止して「女川原子力発電所UPZ関係自治体協議会」を設置。国や県へのさらなる要望活動に向け、組織体制を強化した。
会長に就いた渥美巌市長は「UPZ自治体には原発による恩恵は何もない」と強調する。「原発の立地道県によってUPZへの交付金額にばらつきがあるのは問題だ」と訴え、要望活動が全国のUPZ自治体に広がることも見据える。
協議会が引き合いに出すのが中国電力島根原発(松江市)が立地する島根県の事例だ。UPZ3市のうち、出雲市は8000万円、安来、雲南両市は各4000万円の核燃料税交付金の配分が保証されている。本年度の宮城5市町への交付金は計650万円。金額は文字通り桁違いだ。
ただ、島根の3市はいずれもほぼ全域が30キロ圏内に入る。宮城の5市町は圏内に住む人口が全体の数%にとどまる自治体もあり、同様の配分規模を求めることが妥当かは議論の余地がある。
一方で、UPZは重大事故時の避難の円滑化や市民の安全確保に向けた便宜上の範囲指定だ。「東京電力福島第1原発事故の影響は20キロも40キロ圏も変わらない」という渥美市長の指摘は重い。30キロ圏の線引きにとらわれ過ぎずにリスクとその対価の在り方を考える視点が、国や県にも求められるのではないか。(西舘国絵)
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