2024ニュース回顧 取材ノートから > 衆院選宮城4区、安住氏圧勝 「裏金」前面、戦術が奏功
<政策論争 埋没感否めず>
勢いを増す逆風と、新たな「地元」での着実な浸透-。これまで別々の選挙区で強固な地盤を築いてきた前議員2人の初対決は、くっきりと明暗が分かれた。
10月27日投開票の衆院選宮城4区で、立憲民主党の前議員安住淳氏(62)が自民党の前議員伊藤信太郎氏(71)ら3氏を破って10選を果たした。10万2229票を獲得、全12市町村を制する圧勝だった。
小選挙区定数の「10増10減」に伴う区割り変更で、石巻地方を含む旧宮城5区は旧4区だった塩釜市や多賀城市、富谷市などと同じ新4区となった。安住氏にとって、相手の地盤である仙台圏の票をいかに取り込むかが焦点だった。
新区割りの決定直後から安住氏は動いた。支持者から紹介された仙台圏の有権者を足掛かりに、各自治体に後援会組織を構築。ミニ集会をきめ細かく重ねた。党の要職だけに衆院選では全国各地を巡り応援遊説を行う立場だが、今回は公示日以降も選挙区にとどまり、街頭に立ち続けた。
伊藤氏も石巻地方の催しへの参加やつじ立ちなどで積極的に顔を売った。公示日は多賀城市内での第一声後、矢継ぎ早に旧5区の東松島、石巻両市へ。その後も安住氏の地盤を切り崩そうと何度も石巻地方に入った。ただ、自民党の裏金問題の逆風は強く、有権者の反応はいまひとつだった。
選挙戦終盤、裏金問題に関与した非公認候補側に自民党本部が2000万円を支出していたことが発覚。逆風はさらに強まり、大勢は決した。安住氏は街頭で「政治とカネ」追及を緩めず、批判票を最大限に取り込み圧勝につなげた。
選挙前、裏金問題がこれほど影響を及ぼすと予想した人はどれだけいただろうか。公示前「党への逆風はたぶんあると思うが、私に対する逆風は感じない」と言い切った伊藤氏は、比例復活にも届かなかった。
釈然としない思いも残った。裏金問題を前面に押し出す安住氏や立民の戦術は奏功したものの、肝心の政策論争が埋没した印象は否めない。石巻地方に限っても少子高齢化や原発の再稼働などさまざまなテーマがあったはずだ。より具体的な議論を聞きたかった有権者は多かっただろう。
衆院選では自民党新人の森下千里氏(43)が比例東北ブロックで初当選し、石巻地方を地盤とする衆院議員は安住氏と合わせて2人になった。待ったなしの地域課題が山積するだけに、その実行力に厳しい視線が注がれる。(及川智子)
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