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考えよう地域交通 > 第1部・生活の足は今(6) 識者に聞く まちと一体で再考を

姥浦道生(うばうら・みちお)氏、1973年富山市生まれ。東大大学院工学系研究科博士課程満期退学。2020年から東北大大学院工学研究科教授。23年4月から現職。専門は都市・地域計画。石巻市第2次総合計画の後期基本計画(2026~30年度)審議会会長も務める。

 地方の路線バスや鉄道が存続の危機にある。住民の足の現状と、将来にわたって維持していく方策について、石巻市地域公共交通活性化協議会の会長を務める東北大災害科学国際研究所の姥浦道生教授(51)に聞いた。(聞き手は相沢美紀子)

   ◇

-全国の地方都市で公共交通が衰退し、交通事業者は赤字続きだ。

 「まちは交通と一体で成り立つ。舟運の時代は川や港の周辺に、鉄道の時代は駅周辺にまちができた。1970~90年代に自家用車が普及し、バイパス沿いが栄えた。個人交通を軸とした社会になり、ライフスタイルと公共交通がなじまなくなっている」 
 「都市部の仙台市でもバスの黒字路線はゼロだ。公共交通はインフラであり、赤字が駄目とは限らない。一方で、需要に応じてデマンド型にする、車両を小さくする、路線を変えるといった経営感覚は必要だ」

-石巻市の特徴は。

 「合併で広くなり、雄勝、北上、牡鹿などの末端交通を一つの自治体で担う難しさがある。ただ、半島部の集落は海岸線沿いに集中する。山あいにも集落が点在する能登半島などと比べて、路線をつなぎやすいのは有利だ」

-次世代の公共交通の在り方は。

 「20年後、40年後を見据え、まちづくりと一体的に考える必要がある。残す路線と、乗り合いタクシーなどで補う地域を明確にする。背骨となる路線を中心に都市機能を集約し、居住を誘導する方策が重要だ」 
 「バスやマイカーでの自動運転の実現は期待が大きいが、全個人への普及はコストや技術の面でまだ難しい。商業施設や病院の送迎バス、カーシェアといった『公共的交通』を融通し合うのが鍵になる。スーパーのバスが買い物客以外も乗せて公共的な役割を担い、行政が支援する形を模索してはどうか」

-交通機関を利用しない人の中には、多額の税金を投じることに批判的な意見もある。

 「今の自分には必要なくても、将来は必要になる可能性がある。公共交通の維持を論じると運行事業者への補助などに目が行きがちだが、観光や商業、福祉などと組み合わせて、まちと生活を豊かにしようとする視点が大事だ」

-石巻地方への提言は。

 「平たんな地形を生かし、もっと自転車を活用してはどうか。最寄り駅までは自転車を使う、雨天時にはバスに乗るなど、保護者の送迎が増えている中高生を中心に生活を見直してみては。排ガスは出ないし、健康にもいい」 
 「自転車は観光面でも期待できる。バスに積めるようにして、行きは半島部を自転車で巡り、帰りはバスを使うなど、公共交通と自転車の掛け合わせは可能性が大きい」

(第1部は相沢美紀子、漢人薫平、西舘国絵が担当しました)

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