滔々と 私の大河 > 須能邦雄さん 第5部 サケマス船団長編(3) 北洋サケマス漁、終焉に向かう
私が大洋漁業(現マルハニチロ)で船団長をしていた頃、日本の母船式サケマス漁業が終焉(しゅうえん)を迎えようとしていた。その背景には「母川国主義」と呼ばれる海外の主張があった。
母川国主義とはサケやマスのように海を回遊して川に戻る魚種は生まれた川がある国に資源の権利があるという考え方。母川国のみが、その魚の資源の維持や漁獲などの権利を持つ。自国の利益のために他国を締め出そうと、米国やカナダなどが強く主張していた。
日本は毎年縮小される漁獲量と高騰する漁業協力費に苦しんでいて、母船式サケマス漁業で利益を出すことが難しくなっていた。多い時は11船団で操業していたのが、私が船団長になった1986年には4船団にまで減っていた。その厳しさが伝わるだろう。
母川国主義については何年も前から国際会議で話題には出ていたが、大きく扱われることはなかった。米国が若者の雇用など政治的なことを背景として、急速に進めてきた印象を受けた。
この関係で船団長をしていた時期だったか定かではないが、日本は米アラスカ州で捕っているキングサーモン(マスノスケ)の漁獲量について、米国から観光資源を減らすなと、クレームを受けたこともあったと記憶している。
船団長をしていた頃の私の働き方だが、サケマス漁のシーズン(5~8月)は海にいて、それ以外は日本政府に協力し、他国と漁獲量の交渉をしたり、日本側の言い分をまとめた資料を作ったりと、慌ただしく過ごしていた。
私が関わることになったのは、トロール船での下積みやサケマスの独航船での経験など、現場の事情がよく分かると判断されたからではないだろうか。
米国には駐在員として数年間滞在もしたし、サケマスなどの資源調査のやり方や管理、漁獲量について話し合う北太平洋国際漁業委員会(INPFC)にも出席した。外国人の水産業に関する考え方に詳しかったこともあっただろう。
サケマス漁をしているとイシイルカが網に掛かってしまうことがある。船団長だった時期には母川国主義への対応だけでなく、イルカなどの海洋哺乳類の保護法とも向き合った。
日本は狙ってイルカを捕っていたわけではないが網に掛かってしまうので、国内消費をしていた。ただし、秋田など一部の県で食される程度だったと思う。それでも米国は「クジラやイルカを殺すとは何事だ」と批判を強めてきた。
振り返ると、駐在員の勤務が終わり米国から日本に戻ってきた81年ごろ、私を大洋漁業に誘ってくれた元専務から「いずれ北洋のサケマス漁業の時代は終わる。巻き網漁の方が将来性もあるから異動を考えたらどうだ」と言われたことがあった。
私は米国での勤務経験から日本の水産業に逆風が吹いていることを船団長になる前から感じていた。それでも「米国は行っている政策を途中で諦めるだろう。まだ漁はできる」とも考えていた。
まさか自分の代で北洋のサケマス漁が終わりを迎えるとは思っておらず、想像以上の速さで時間が流れていた感じがした。
これはまだ先の話になるが、別の専務から「これまで苦労をかけてしまっていたので、須能さんには希望する部署で働いてもらおうと考えている」と声を掛けられた。その時は、経験したことのない仕事の方がいいと思っていたので、ロシア勤務と紙に書いた。
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宮城県警 みやぎセキュリティメールより
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