牡鹿統治、道嶋氏に迫る 県多賀城跡調査研究所の吉野所長が講演 東松島・赤井
東松島市赤井の赤井官衙(かんが)遺跡を拠点に奈良時代、牡鹿郡を統治した道嶋氏に関する講演会が19日、市赤井市民センターで開かれた。
県多賀城跡調査研究所の吉野武所長が、道嶋氏一族が約1300年前の古代陸奥国(むつのくに)でなぜ有力豪族となったのか、歴史から消えた背景などを解説した。
奈良時代の東北では朝廷が蝦夷と争い、東北に強い軍事施設を置こうと多賀城に国府を、牡鹿郡に牡鹿柵(おしかのさく)を築いた。
道嶋氏は蝦夷との戦争や牡鹿柵造営と維持のほか、764年に中央で起こった藤原仲麻呂の乱で活躍し、名声を挙げた。位階などを取得し、上皇や国司などとのつながりで地位を固めた。
しかし、770年に頼みとした孝謙上皇が崩御。同年に城柵を侵攻しようとする蝦夷との交渉を行って以降、歴史に名前が登場せず、774年から蝦夷の反乱が起こった。
吉野所長は「事態の収拾、説得に失敗したのではないか。道嶋氏の台頭の本質は律令(りつりょう)体制での出世や影響力の拡大。実態は国司の下で国に仕える牡鹿郡大領(郡司)としての姿だ」と結論付けた。
会場では市民ら115人が熱心に耳を傾けた。
東松島市矢本上河戸の60代無職男性は「全体像が分かりやすかった。蝦夷の土地でもあった場所で争いが起こったことから、統治する者とされる者両者に思いをはせる時間になった」と話した。
講演会は東松島市教委が主催した。
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