鯨を考える、石巻学プラスワン 作家・山川さん「漁師の生きざまに共感」
捕鯨をテーマにしたトークイベント「石巻学プラスワン」が20日、石巻市立町2丁目のラ・ストラーダであった。捕鯨船に乗って実際にクジラ漁を取材したノンフィクション作家山川徹さん(47)が、鯨捕りに生きる海の男たちについて語った。
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山川さんは山形県出身。2007年と08年の調査捕鯨、22年の商業捕鯨でそれぞれ船に乗り込み、計約180日間にわたり取材。捕鯨にかける船員の思いなどを取材した。
トークで山川さんは「勝ち組・負け組という価値観が強かった日本社会で、捕鯨船の船員たちは、金や地位よりも仲間のために働いた」と鯨捕りに挑んだ男たちの生き方を紹介。
その上で「捕鯨は狩猟と違い、1人だけでは絶対にできない。仲間への信頼、船員たちの和が大切だった。力を合わせて一つの目標に向かった。そこに共感した」と強調した。
捕鯨の是非を論じるのではなく、現場でどんな働き方があるのか、なぜ捕鯨の仕事に引かれるのかとの視点からアプローチした山川さんの語りに、かつて同市鮎川地区が捕鯨基地として栄えた歴史を知る市民らが興味深そうに耳を傾けた。
トーク後、石巻学プロジェクト代表の大島幹雄さんが進行役となり、山川さんと参加者が意見交換。将来、日本が食糧不足になった場合、クジラが貴重なタンパク源として活用が見込まれる点に着目し、捕鯨の未来を探り合った。
石巻学プラスワンは石巻の魅力を探る場づくりイベントで、今回が18回目。地域誌「石巻学」は第3号(17年発行)で「牡鹿とクジラ」を特集している。
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20日の石巻学プラスワンで資料として活用されたのは、山川さんが昨年10月に出版した単行本「鯨鯢(けいげい)の鰓(あぎと)にかく 商業捕鯨再起への航跡」(小学館)だ。
鯨を探す、捕る、さばく、流通させる-といったシンプルな仕事にかける鯨捕りの男たちに魅せられた山川さんのこん身のルポルタージュだ。捕鯨船に計3回乗り、彼らと寝食を共にした山川さんだからこそ聞き出せた本音、仕事への誇りがつづられている。
反捕鯨国・団体からの批判や妨害活動を受けながらも漁を続けた男たちの群像劇でもある。それは、調査捕鯨から商業捕鯨へと再び舵(かじ)を切った日本の捕鯨の歴史とも言える。
「クジラ博士」の愛称で親しまれた鯨類学の権威で、鮎川で暮らしたこともある大隅清治さん(2019年死去)と山川さんとの対話がまた興味深い。反捕鯨国・団体とどのように向き合うかを巡り、大隅さんが「科学的データは(捕鯨国と反捕鯨国の)共通言語にならない」と訴えた言葉に考えさせられる。
「鯨鯢の鰓にかく-」は1980円。354ページ。
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