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子育てと介護の縁側・今日も泣き笑い > 特別編 座談会(3) 悩み抱え込まず相談を

ダブルケアの日常を語る柴田さん
父の介護経験を語る大森さん
早めに相談するよう呼びかける秋田さん
介護者の負担軽減について語る河瀬さん

 家庭介護をテーマにした座談会。石巻かほくで介護と子育てをテーマにしたコラム「今日も泣き笑い」を連載中の柴田礼華さん(44)と、父親を介護する茶道裏千家助教授の大森宗憲さん(55)、介護支援専門員の秋田仁さん(54)が、24時間介護に向き合う心境や、乗り切るための心構えについて語った。司会は家庭介護の支援に取り組む石巻市雄勝歯科診療所所長の河瀬聡一朗さん(47)。

   ◇

-大森さんは、認知症で要介護5の実父(89)を8年間、介護されています。24時間365日続く介護で参ってしまうことは。

 大森>参ってしまうことの連続です。父中心の生活で24時間ほっとできません。ようやく眠ってくれたと自室に戻ると、せき込む声が聞こえて、また父の元に戻って、という日常です。宿泊を伴う出張は8年間断り続けています。自分の人生はどうなるのかと思い詰めることもあります。 
 それでも父の体を洗っている時など息子としての最後の役割なのかなと感じます。父とは長年折り合いが悪かったのですが、わが子と思って接することで、いとおしく思えるようになりました。少しでも楽しさや達成感を感じられるよう、気持ちを切り替えることが大事だと思います。

-柴田さんは要介護1で認知症の義母(87)、要支援2の義父(86)に加え、長女(5)、次女(1)と暮らしています。つらさを感じることは。

 柴田>寝不足や疲労、空腹といった自分の状況や、心のありようにもよります。1人で高齢者と幼児の計4人を同時に見ている時に同時多発的にトラブルが発生すると、何から手を付けようかとパニックになります。 
 介護する側がパニックにならないよう、サービスや友人を頼った方がいいと割り切っています。訪問介護は、同居家族との共用部分の清掃はサービスの対象外なので、みやぎ生協の有償ボランティアによる家事援助サービスを利用しています。1時間600円で掃除や調理をお願いしており、義父は友達が来てくれる感覚で会話を楽しみにしています。

-多様なサービスがあるんですね。

 大森>うまく活用して支えてもらえばいいと思いますが、地域では「介護をしていると知られたくない」「家に他人を入れたくない」という考えも根強く、利用しない家庭も少なくないようです。

 秋田>最近もご主人に認知症の症状がありながら、奥さんが受け入れられずに悩み続けていた家庭とつながることができました。1人で抱え込まず、気軽に地域包括支援センターに相談してほしいです。

-お二人は、現在は在宅で介護されていますが、最終的にはどうしたいと考えていますか。

 柴田>寝たきりになった時のことは、まだ想定できていません。近くに住む夫の姉たちが、私たち夫婦の負担を思って「無理しなくていい」と言ってくれていますが、義母本人の思いを尊重したいです。 
 状況が変わって在宅が難しくなった時には、その時々の最善策を検討すると思います。その上で、あらゆる資源を生かして、家での暮らしを一日でも長くしたいと考えています。

 大森>わが家は家族の意志が一致したため在宅を選びましたが、施設にお願いすることが薄情ではありません。介護が原因で家庭が崩壊するケースもあります。挫折や幻滅といった感情に陥るぐらいなら、施設を利用した方がいいと思います。

-逃げ道を確保するということですね。

 大森>そう。耐えるのが美徳と考える風潮がありますが、弱音をはいてもいいと思います。悲惨な結果を招かないことが何より大事です。選択肢は多様で、そのどれもが介護なんです。

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