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女性用シェルター需要増、相談相次ぐ 背景に物価高 男性の居住支援も 石巻「やっぺす」

 石巻市内で女性と子ども専用シェルターを運営する石巻市開北3丁目のNPO法人「やっぺす」に、住まいの支援を求める相談が相次いでいる。常設シェルターだけでは足りず、アパートの空き部屋を借りて計11室を提供しているが、本年度はほぼ満室状態が続く。法人は、ドメスティックバイオレンス(DV)や想定外の妊娠などに加え、物価高騰による生活困窮も需要が高まる背景にあるとみる。(相沢美紀子)

入居者が共同で利用するシェルターの台所。困難を抱える女性たちが身を寄せ、生活の立て直しを目指す

 「夫からDVを受けている」「出産を控えているが未婚で実家も頼れない」「虐待する親から逃げたい」「子どもに殺されそう」

 法人には切羽詰まった女性の相談が相次ぐ。本年度は昨年末までに、10代から高齢者までの女性から延べ473件の相談があった。

 2020年12月に1棟から始めたシェルターは年々需要が増え、本年度はシェルター3棟(7室)に加えて、地域の家主らの協力で応急的にアパートの空き室4室を借りて計11室を提供するが、24年4月以降はほぼ満室。23年度は計36世帯が利用した。シェルターを介さずに直接民間の賃貸住宅につなぐケースも含め、本年度は1月末までに計約50世帯の女性たちが居場所や住まいを確保した。

 需要が高まる背景について、共同代表理事の高橋洋祐さん(40)は昨今の物価高騰の影響を指摘。「これまで辛抱してきた人たちが困窮に耐えきれず、駆け込んできている」と語る。

 利用者の中には知的障害者の療育手帳の交付決定を待つ人、長年虐待を受け続けて判断力に乏しい人もおり、入居期間が長期化する傾向にあるという。外国人からの相談も増えた。法人は入居期間に生活を立て直せるよう、家計管理の支援など見守りを続ける。

 活動資金も課題。自主財源で運営し、シェルターの利用料(1世帯1日1000円)と民間の助成金で賄う。法人は高まる需要に応えるため、県共同募金会の「みやぎチャレンジプロジェクト」などを活用し、安定した財源の確保を探る。

   ◇

 シェルターを運営するNPO法人「やっぺす」は、男性への居住支援事業にも乗り出した。高齢や障害などを理由に、賃貸住宅の契約が難しい男性の住まいを確保するため、法人が家主から物件を借り、男性に貸し出す。入居後の見守りを行い、家賃滞納や孤独死などに対する家主の不安を抑える。

 転貸(サブリース)と呼ばれる手法で、政府が普及を推進。法人は県から「居住支援法人」の指定を受けて取り組む。居室に室内温度や動作を検知する見守り機器を設置、緊急連絡先になることを引き受け、生活相談にも対応する。

 「年金収入はあるが、連帯保証人を立てられずに離婚後の住まいが借りられない」「車上生活をしていたが燃料が切れた」。法人は女性の入居支援の中で、男性からも相談を受け始めた。本年度は1月末までに男性27人から相談があり、11人の住まいを確保した。

 高齢者への貸し渋りは社会問題。2021年の国土交通省の調査によると、約7割の家主が家賃滞納や室内での死亡事故の懸念から高齢者の入居に拒否感を持っているという。転貸には家主にとって空き室解消という利点もある。

 共同代表理事の高橋洋祐さん(40)は「制度は家族ありき。単身世帯が増加し、制度からこぼれ落ちる人は増える一方だ。制度から抜け落ちた人たちに伴走する受け皿が必要だ」と指摘する。

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