水産業、燃料電池で脱炭素化 石巻地域推進協と県、勉強会 「地域で連携を」
地球温暖化対策の機運が世界的に高まる中、地域の脱炭素化と産業競争力強化に向けた「次世代エネルギー活用勉強会」が1月23日、石巻市中央2丁目の石巻商工会議所であった。昨年10月に続いて2回目の開催。固体酸化物形燃料電池(SOFC)導入による水産業などの脱炭素化に向けた取り組みやその必要性について、参加者が理解を深めた。
SOFCは、水素などの燃料と酸素の化学反応で電力や熱をつくる発電効率の高い燃料電池。石巻地域水産加工脱炭素化促進協議会(※)と県が開いた勉強会には、地元企業や研究者、メーカーの担当者など35人が参加。同協議会の代表を務めるヤマナカ=石巻市幸町=の高田慎司会長らが講師を務めた。
高田会長は、高水温によるホタテ稚貝の「へい死」被害など、温暖化に直面する水産業の課題について説明。次世代エネルギーの活用技術として注目されるSOFCについて「低炭素社会実現の第一歩となる」と語った。
2050年に温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」実現に向けて企業を支援している、みらいブライト=千葉県船橋市=の井本康夫社長は、GX(グリーントランスフォーメーション)への対応の必要性や、排出削減に向けた先端設備の導入が企業の付加価値創出につながると指摘。
「脱炭素化はビジネスチャンスとなり、石巻の水産業のブランド価値を高める。1社だけではなく地域で連携することが、持続可能な取り組みにつながる」と強調した。
東北大SOFC/SOEC実装支援研究センター副センター長で、同大工学研究科の高村仁教授は、SOFCの海外や国内での導入事例を説明し「グリーン電力で価値が高く、産業の種になる」と紹介した。
SOFCを開発する自動車部品メーカー、デンソー=愛知県刈谷市=水素事業推進部SOFCシステム開発室の山田兼二氏もオンラインで参加。SOFCの脱炭素化に向けた優位性を強調した。参加者からは「将来性はあると思うので、コストをどれだけ削減できるかはっきり分かれば、導入する可能性はある」などの意見が出た。
高田代表は「SOFC導入で二酸化炭素排出量を削減でき、光熱費も低減できる。地域全体、業界全体で実証事業を実施し、数値を提供して(脱炭素化を)考えていくことができればいい」と期待を込めた。県次世代エネルギー室の担当者は取材に「来年度以降のSOFC導入に向けて、継続的に支援していきたい」と話した。
(※)石巻地域水産加工脱炭素化促進協議会:地産地消のエネルギーモデル構築を進めることで、国際競争力が高く持続性のある水産都市の実現に寄与しようと2024年6月設立。ヤマナカ、布施商店、みらいブライト、石巻ガス、東北大SOFC/SOEC実装支援研究センター、石巻市で構成。水産業の脱炭素化による競争力強化に向けて、水産加工工場といった施設への燃料電池などの先進設備導入を目指している。
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