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子育てと介護の縁側・今日も泣き笑い > 特別編 座談会(4・完) 介護する人のケア、必要

介護者への支援の必要性について語り合う(左から)河瀬さん、柴田さん、大森さん、秋田さん=石巻市の三陸河北新報社

 家庭介護をテーマにした座談会。石巻かほくで介護と子育てをテーマにしたコラム「今日も泣き笑い」を連載中の柴田礼華さん(44)と、父親を介護する茶道裏千家助教授の大森宗憲さん(55)、介護支援専門員の秋田仁さん(54)が、家庭介護をする上での石巻地方の課題や、介護者への支援の必要性について語り合った。司会は家庭介護の支援に取り組む石巻市雄勝歯科診療所所長の河瀬聡一朗さん(47)。

   ◇

-大森さんは、認知症で要介護5の実父(89)を8年間、介護されています。家庭介護をする上での石巻地方の課題はありますか。

 大森>災害時の父の避難場所についてです。一般の避難所では認知症患者の受け入れは難しいと聞いたことがあります。一次避難場所で父を受け入れてくれるのか、そこでどう排せつさせたらよいか、二次避難先の福祉避難所は十分な人数を受け入れられるのか、情報が少なく不安です。

-柴田さんは長女(5)と次女(1)を育てながら、要介護1で認知症の義母(87)、要支援2の義父(86)と暮らしています。

 柴田>わが家は東日本大震災後にできた集団移転団地にあります。新しいまちで若い世代が多く、日中は留守がちです。加えて新型コロナウイルスが流行し、近所付き合いを自粛する風潮になりました。隣近所の見守りの輪が希薄になっていないか、母や娘たちが迷子になった時などに心配です。

 秋田>かつての地域コミュニティーが震災で崩れ、再構築している時に新型コロナが流行したため、安心して暮らせる環境には至っていません。現状の地域包括ケアシステムの課題です。

-生活上での不安はありますか。

 大森>要介護者に対する支援メニューはたくさんありますが、介護する人へのケアがありません。私たち家族に何かあった時が不安です。まだ若く健康だから耐えていますが「老老介護」をしている高齢者はどう自身をケアをしているのか気掛かりです。

-24時間、365日続く介護を続ける上での心がけは。

 大森>愛情と諦めでしょうか。用意した食事を食べてくれない時はショックですが、食べなくてもいいと思うと楽になります。

 柴田>自分を大事にすることも大切です。人のために生きていると思うと、その人のせいにしてしまいます。自分の意志でやっているという主体性が大切だと思います。 
 私たちはお茶や剣道など夢中になれるものがあり、気分転換できているのもいいのかもしれません。

-介護はネガティブなイメージを持たれがちですが、柴田さんと大森さんは明るくオープンなのが印象的です。

 柴田>私の妹は障害がありますが、実母は「悪いことをしているわけではないのだから隠す必要はない」と昔からオープンでした。家族に何かあった時のために、周囲に知っておいてもらった方がいいです。

 大森>うちも父が徘徊(はいかい)した時に見つけてもらえるよう、近所に告知しています。オープンな家庭ほど、介護がうまくいっているように見受けられます。

 秋田>認知症ケアに求められるのは安心感です。地域の人々が認知症を正しく理解することが、当事者や家族の安心感につながり、誰もが安心して暮らせる石巻になるはずです。

-介護している人へメッセージを。

 秋田>家族や周囲の人の異変に気付いたら、ささいなことでも地域包括支援センターに相談してほしいです。そこから支援につながります。医療機関の受診も早ければ認知症の進行を抑えられます。

 柴田>必ずしも年長者が先に亡くなるわけではなく、自分も事故や病気でいつ介護される側になるか分かりません。数ある介護サービスの中からどんな選択をするか、客観的に見られるように専門機関などに相談することが大事だと思います。孤独にならず、苦しい時はいろんな選択肢があると知ってほしいと思います。

 大森>父が認知症と診断された時、俺の人生は終わったと思いましたが、絶望しないでほしいです。介護する人同士のコミュニティーに顔を出して、いろんな家庭の事例を聞くことで、受け入れられることも増えると思います。それが「ハッピー介護」につながります。

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 特別編・座談会は今回で終わります。来週から柴田さんのコラムを再開します

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