閉じる

男の介護教室、広がる輪 初の北上・雄勝合同開催 孤立防ぎ、仲間づくりも

 石巻市を中心に開講する「男の介護教室」が活動の輪を広げている。先日は初めて北上地区で開催した。高齢化率の上昇で、男性が家族の介護に関わる機会が増える一方、家事の経験が少なかったり、家庭内の悩みを打ち明けるのが苦手だったりして、一人で悩む男性は少なくない。孤立を防ぎ、男性が仲間をつくりながら相談しやすい関係を構築できるよう、医療や福祉の従事者が連携し、工夫を凝らしている。(相沢美紀子)

そろいのエプロンを身に着けて調理をする参加者。ポリ袋などを利用して簡単にできる調理法を学んだ=1月28日、石巻市北上公民館

 同教室は、東日本大震災後、仮設住宅の入居者に認知症の発症が増えたことを機に、市雄勝歯科診療所所長の河瀬聡一朗さん(47)を中心に石巻地方の介護支援専門員や歯科衛生士、保健師ら11人が2014年1月に立ち上げた。介護に奮闘する男性らを集め、介護や健康にまつわる講話や調理実習を展開し、石巻市を中心に全国18カ所で開いてきた。

 新型コロナウイルス禍による休止を経て、石巻地方では現在、河南、雄勝の両地区でそれぞれ年3、4回開講する。

 雄勝地区の教室を主催する市社協雄勝支所などは1月28日、初の雄勝、北上両地区の合同開催として市北上公民館で開講し、18人が参加した。

 調理実習では、炊飯器で炊くピラフや、ポリ袋で湯煎する蒸しパンなど手軽な料理3品を作った。参加者は「簡単なのにおいしい」「75歳で初めて調理し、楽しさを知った」などと会話を弾ませた。河瀬さんによる口腔(こうくう)ケアの講話や、福祉用具の説明もあった。

 初回から参加する同市雄勝町大須の小松英雄さん(86)は「役立つ話を聞いて、調理をしながら語り合えるのが楽しい」と話す。

 実母(96)を自宅で介護する同市北上町十三浜の施設管理業千葉靖彦さん(67)は「簡単でおいしい料理や講話など参考になった。次回も参加したい」と笑顔を見せた。

 河南地区の教室は、同市北村の遊楽館などを拠点に年4回開講し、市内外の60~80代の約20人が参加する。23日には本年度の4回目教室としてそば打ちを行い、新年度は新たな参加者を募る方針。

 在宅介護者のうち、男性の割合は35%(19年)。教室の代表を務める河瀬さんは「男性は家事経験や地域との関わりが少ない上、完璧にこなそうと孤軍奮闘した結果、要介護者への暴力や殺人に至る事例がある」と指摘。「介護を担ったり1人暮らしになったりしても、孤立せずに暮らせるよう、楽しみながら仲間や専門職とのつながりを育んでいきたい」と語る。

関連リンク

石巻かほく メディア猫の目

「石巻かほく」は三陸河北新報社が石巻地方で発行する日刊紙です。古くから私たちの暮らしに寄り添ってきた猫のように愛らしく、高すぎず低すぎない目線を大切にします。

三陸河北新報社の会社概要や広告などについては、こちらのサイトをご覧ください ≫

ライブカメラ